答えは簡単で、日本語の話者が1.2億人しかいないからです。日本で生まれて、日本に特化したサービスは、日本というマーケットサイズを超えることはできません。

一方で、英語圏で生まれたサービスは、英語ネイティブで3.8億人、第二言語として使えるのは11.2億人います。そのため、マーケットサイズが10倍以上あるのです。あなたが投資家だとして、機能がほぼ同じサービスがあったとして、一つは英語圏向けです。もう一つは日本語圏向けです。どちらに投資したいですか?答えはほぼ自明です。

英語圏に向けたサービスのほうが圧倒的に人口が大きいためスケールしやすく、スケールしやすいということは儲かり、そしてその収益性によってより速く機能改善を行い続けることができるわけです。これにより、同じサービスであったとしても、最初から英語圏向けに作ることで、初期の投資、初期のユーザ獲得とスケール、改善速度の面において、日本向けと比べて大きな優位を得ることができます。そして継続的な改善によって、いつしか日本語のサポートも行われるようになり、日本発のサービスを駆逐していきます。

では、日本人の開発者の目線から考えましょう、なぜ日本向けにサービスを作るのでしょうか?これもまた思考実験をすると簡単に分かって、開発者が日本人だからです。日本人は日本人の気持ちや商慣習が分かります。そして、日本には1.2億人もの人口がいるため、サービスが成功するとそこそこに儲かるわけです。そのため、日本人に特化したサービスをサッと開発し収益化できるのです。日本人のチームは日本向けのサービスのPMFに長けているのです。

日本語話者は国内でビジネスが成立するくらいに人口が多く、グローバルマーケットで戦えるほどには人口が多くないのです。海外企業からしてみると、日本市場への参入障壁が高いので、後回しになるが、サービスが十分成長したらそのうち行けばいいや、というポジションです。

そのため、日本発の日本向けサービスは、比較的簡単にビジネスを立ち上げることできるが、後発の海外のサービスに改善速度に勝てず殺されることになります。これが、2010年代の日本発のサービスに起こっており、現代でも継続していることです。

そのため、初手でグローバルを目指すベンチャー企業は、サービスを最初から英語版で開発し、日本語版を作らないといったことをします。たとえばTreasureDataやLaunchableなどは、創業者が日本人にもかかわらずアメリカで起業し、英語圏向けにサービスを提供し、英語版ですが日本語でもサポートしています、というアプローチをとります。

一方で、ちょっと違うのが中国です。ニコ動とビリビリ動画の比較なんかも面白いんじゃないでしょうか。ビリビリ動画はニコ動の完コピから始まりましたが、改善に次ぐ改善の結果、登場人物を画像認識してコメントが登場人物の後ろに流れる、といった機能も搭載しています。

なぜニコ動は中国に行けなかったのでしょうか?それは中国から海外のサービスに対するアクセス規制があるためです。中国ではアクセス規制により、海外のサービスを利用することができないため、国内サービスが海外に食い殺されることがないのです。(加えて、中国は14億人の中国語市場があるので、売上も日本の比ではない)

そして、中国市場でチャンピオンになったサービスが圧倒的な収益力をもとにした改善能力をもって、国外に打って出てくるわけです。TikTokがいい例です、中国で大ヒットした抖音(ドゥイン)がグローバルマーケットに出てくる際にTikTokとなったわけです。

つまり中国のアクセス規制は実はデジタル産業の保護貿易として機能しているわけです。

ちなみにビリビリ動画の時価総額は 94億ドル≒1.2兆円、 角川(ドワンゴ)の時価総額は 3700億円だったりします(2023/03/21現在)。話者人口の差というのはこういうところに大きく出てくるのです。

「サービス開発のどの過程が大きな差となっているのか」という質問の答えは「初手でグローバルに向けたサービスだったかどうか?」です。

そして話は変わりますが、国内人口が少ないため、初手で英語でグローバルに行くしかない国というのもあります。例えば北欧や中欧の国々や、イスラエルなどがこれに当たります。韓国は国内で事業が成立するかどうかのギリギリのラインだったりします。

たとえばAngry Birdsを作ったRovioはフィンランドの会社ですが、フィンランド語の話者が少ないため、国内で事業を成立させることができず、初手でグローバル市場に行くことになります。似たようなところで、クラッシュオブクランを作ったSupercellもフィンランドの会社です。

日本とは異なり、初手でグローバルに行くしかない国では、様々な面白いサービスがグローバルに参入していってます。

日本の中途半端な人口の多さが、日本発の様々なサービスを産み、そして駆逐されていっているという現状を産んでいるのです。

1年1年更新

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