「選挙に行く意味」は昔から問われている難問です。まともに答えようとすると何冊も売れない本を書くことになりますが、今回のご質問は論点を絞っておいでですので、こちらも簡潔に答えることができます。
まず、ご質問の内容は近年流行りのシルバーデモクラシー論に影響を受けたものです。「影響を受けた」ではなく「毒された」と表現したほうが回答者の認識がよく伝わると思いますが。このシルバーデモクラシー論自体については他の回答で論じましたので、そちらを参照していただければと思います。
そのうえで、疑問視されている「選挙に行く意味」に関して言えば、「政界次第」というのが回答になります。
「若者への施策が後回しになりがち」という認識は回答者の認識とも一致しています。違うのは、有権者側の年齢別人口構成比を要因と考えるかどうかです。上記回答でも述べた通り、政治家は人口ピラミッドではなく自分自身の具体的な支持者、後援者を参照して動くものです。そうだとすれば、若年層の支持を受けた政党が勢力を伸ばせば、もっと若者向けの政策が充実してくるはずでしょう。
この点について、日本はかつて経験しています。高度成長期に自民党の支持率と議席率が低減し、代わって野党各党が台頭しました。特に「革新自治体」の広がりは自民党政権に危機意識をもたらしました。結果、それまで自民党が支持層としてこなかった都市部の有権者、サラリーマン世帯、若い世代に向けた政策を充実させていきました。
同様のことは、若年層の人口がだいぶ減った現在でも起きています。第2次安倍政権以降、成果はどうあれ、若者向け、女性向け、都市部向けの政策が自民党政権で導入されています。これは、都市部の有権者が大挙して野党を支持し、再び自民党が政権を失うことを恐れ、先手を打っているものと解釈できます。当然その背景には09年の民主党政権の誕生、あるいは反自民党的な政策と行動で受けた小泉政権の経験があります。
現在でも、もっと若者のことを真剣に考えて政策を訴える政党が出現し、若年層が積極的に支持すれば、政治は大きく変わるでしょう。若年層の投票棄権率は高く、この票が投票に向かえば大きく選挙結果を変えられるためです。
たとえばかつての98年参院選、01年参院選、05年衆院選、07年参院選、09年衆院選は、都市部の若年層を中心に票が動いた結果と言えます。そのためには有権者よりも前にまずは政界の側の動きが重要です。これは、選択肢がなければ有権者は意志を表明することができないという選挙の弱みの表れでもあるのですが。ともかく、まずは政治家の方々に頑張っていただくのが王道ということになりますね。