ヨーロッパを中心として形成された近代国家は、国境線をめぐるきわめて長期にわたる戦争の結果として形成された,と言う考え方があります。しかし、アフリカの国家は、すでに引かれた国境線を維持すること(ラテン語ではウティ・ポシデティス原則=現状承認の法理)を前提として,その独立が行われました。ヨーロッパに比べると、国家を形成する上での重要な条件を欠く形での国家形成がが、求められることになったともいえます。このような形で独立した国家を「擬似国家」と呼ぶことがあります。国内の統治能力を十分持たないまま、国際社会からの国家としての承認によって、新たに国家として独立した国々です。従って、独立はしたものの、新たに統治を行うための国家機能を整備することは、当初から困難な取り組みとなりました。そのために、アフリカにおいては、政治的に不安定なことから「脆弱国家」と呼ばれる国が21世紀に入っても多くみられます。その意味では、「安定した国」が、例外的という見方も可能です。比較的安定している国として知られている南部アフリカのボツワナは、ツワナというほぼ単一の民族の国家ですが、植民地(保護領)からの独立前には、ほとんど資源がなく、どのように独立後の政権運営を行えば良いのかということをめぐり、政治エリートたちが危機意識を持っていました。そのため、独立後、アフリカのほとんどの国では行政の担い手を、植民地官僚(白人)から自国民に変更しました(結果的に行政機能の向上には失敗しました)が、より効率的な行政を行う観点から、あえて植民地官僚を残す選択をし、独立直後に発見されたダイアモンドに関しても、開発に関わった企業とうまく交渉することで、安定した財源を確保することに成功したことが、一つの安定要因です。それ以外にも、紛争に陥っていない国々では、多民族から構成される人々を一つの「国民」としてまとめる政治指導者がいた国には、比較的安定した国になっているという考え方もあります。研究者の間でも未だに様々な議論が行われている問題といってもいいでしょう。

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遠藤貢さんの過去の回答
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