まず大学時代のお話は他の質問でも回答させていただきました。
回答を置いておきますね。
https://mond.how/ja/topics/xyqsf9hjbk7c4n4/8k6notx080vf4y9
さて、卒論に話を戻しますとやはりテーマ選びで苦労しました。
私は西洋史のゼミの所属していた訳ですが、
最初はドイツの「戦闘的民主主義」をテーマにしようとしていました。
これは要するにドイツがナチスドイツを経て、「民主主義を守るには強権を必要とする」と自覚し、
そうして作られた制度、政治的態度を指します。
https://de.wikipedia.org/wiki/Streitbare_Demokratie
de.wikipedia.org
しかしこのテーマ選びは大きな問題がありました。
1.問題が抽象的
2.日本語の先行研究がない
というわけで上記の部分
ドイツがナチスドイツを経て、「民主主義を守るには強権を必要とする」と自覚
を具体的に成した政治集団「緑の党」にテーマを絞り、ようやく書き始めることができました。
緑の党に関してはけっこうな先行研究がありました。
印象深いものですと1983年に書かれた『緑の党』がまず挙がります。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784061456945
永井清彦の『緑の党』は緑の党の黎明期を扱っていまして、
生まれたばかりのこの政党が何事か成してくれるに違いない、という希望が強く描かれています。
後の緑の党本ではこうした明るい部分は省略されがちなので、これはこれで興味深いものでした。
「緑の党の集まりは他党に比べ開かれていて、勤め人を想定して平日の夜に開かれた(他党は平日の昼)。
サラリーマンだけでなく子連れの主婦も参加し、居心地の良い集いなのは印象的」等々、良い意味が細かい話が載っています。
他にはこの分野では基礎的な文献と言っていい石田勇治の各著作、
特に『過去の克服』などに目を通しました。
こちらはベルリンの壁崩壊と東西ドイツの統一等の世間的にも有名な事件と絡め、
通史を、そして緑の党についても語ってくれています。
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b631645.html
他8冊ほどの緑の党関連の書籍をまとめ、
緑の党の特徴とその意義について書いたのが私の卒論になった訳ですが……
まあ指導教官からすれば「歴史的意義」に欠けます。
「よくまとめられているが、その事実はつまりあなたにとってどういう意味を持つのか」と発表の場で聞かれた時には答えに窮しました。
身も蓋もないことを言えば「面白い」に尽きますので。
配信の中で緑の党を振り返る私。議会の中をよれよれのコートで歩き回り、
「品の良いスーツを着た連中」と自らを区別した緑の党の議員達が面白くないはずはありません。
とはいえ、真っ当な論文なら先述の情報を踏まえた上でなにかを語らなければいけないはずでした。
私にはそれがなかったのですね。
とはいえ、歴史学はなによりも情報の収集を重視します。
ちゃんと情報を集めれば情報自らが「新情報」を語りだしてくれるのです。
-それはつまり、我々歴史学者が情報の集まりから「新情報」を見出すということなのですが-
以上が私の卒論の経緯です。
上記画像を抜き出した配信のURLも最後に置いておきます。
https://www.youtube.com/live/1Ha5FomjHO4?si=yKPJoVesW31c--hi