そのような考えはもちろんあるよ!だからこそ、時間の流れが本当に存在するのか、という難題に回答が得られていない、ともいえるね。

そもそも、世界が分岐するという多世界解釈を持ち出さなくても、エントロピーが自然に減少するという状態はありうるよ。これは「ポアンカレの回帰定理」で証明されているよ。本来、世界は多数の粒子で構成された多体問題であり、数学的にはカオス的に発展し、未来は予測がつかないけれども、とりあえずエントロピーが高くなる方向に発展する可能性が高いと言えるよ。ただしポアンカレの回帰定理によれば、多体問題のある初期状態からカオスに発展したものが、有限時間内に元と同じような状態に戻る可能性はゼロではなく、むしろ無限に初期状態に近い状態に戻りうる、と説明しているよ (近い状態であることに注意。可能性はゼロではないものの、全く同じに戻るとは限らない。) 。文字通り時間はたっぷりあるので、無限の時間をかければ、ゼロではない確率のことは必ず発生し、無限に繰り返すことになるよ。このために、宇宙全体がエントロピーの低くなる方向に発展していく、という可能性はゼロじゃないよ。その点で、このような状態の宇宙は時間の流れが逆方向になっている、と感じてもおかしくはないよね。この場合の宇宙は「時間の流れが逆になっている」なのか、それとも「時間の流れが逆になっているように "見えている" 」なのかは謎で、それこそ「過去から未来に時間は流れているのか?」という疑問とほとんど同じことを聞いているよ。

ただし、確率がゼロではないとは言ったものの、本当にそれが起こるのか?と言われると、実質的にゼロと言えるよ。現代宇宙論で最も辿る可能性の高い宇宙の運命は、宇宙は最低のエネルギー状態と最高のエントロピー状態となり、それ以上何も発展しなくなる「熱的死」というシナリオだよ。熱的死を迎えた宇宙は、エントロピーがこれ以上上がりようがないので、時間が流れていると言えるのか?という疑問もあってそれはそれで面白いけど、とりあえずそこは割愛するとして、この状態からポアンカレの回帰定理により、元の宇宙が再現される可能性は全くのゼロじゃないよ。ただ、そのために必要な時間は10^(10^(10^3883775501690))程度と推定されているよ!これに対し、例えば量子力学的に真空から新しい宇宙の種が生成し、それがインフレーションする平均時間は10^(10^(10^56))とずっと短いと推定されているよ。さらに、それより短い時間で偽の真空の崩壊や第2のインフレーションといった、エントロピーの最大値を下げ、宇宙自体を再構成しうるイベントが発生しうるよ。ということで、ポアンカレの回帰定理により、この宇宙が自然とエントロピーが減少するような事態に遭遇する可能性はゼロとは言えない、けれどもそれよりも先に宇宙自体が再構成される確率の方がずっと高い、と言えるよ。

そして、これらのシナリオは現実の宇宙に対してはずいぶんと単純化されているから、異論があることに注意が必要だよ。ポアンカレの回帰定理が宇宙全体にそのまま適用できるのか、熱的死が単純に起こりうるのか、偽の真空が本当に存在するのか、そもそも宇宙は量子力学的に生まれるのか、といった数々の疑問も、時間の謎と同じくらい難題として立ちふさがっているよ。

1 year ago1 year agoUpdate

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