理研の予算は年間1000億円、東大は2500億円。国民一人あたりにして800円と2000円くらいですか。スーパーに行くといつも割引のお惣菜を探し回る身としては、確かに大きな支出です。いったい何の役に立つのか。そう感じるのはまったく自然なことですね。国の研究予算から喰い扶持をいただいている立場でこういうことをいうのはまずいかもしれませんが、私の研究なんて社会の役に立つことは決してないでしょうし、わくわくしてくれるのは世界中を集めてもたぶん数十人くらいです。そんなもののにお金を出すのはけしからん。そう言われると返す言葉もありません。

じゃあ研究予算って何なんだ。そう考えたときに思い出す最近の例はあれですね。コロナワクチンです。mRNAワクチンを開発した人は、もともとそれを意図した研究をしていたわけではないそうですね。新型コロナが流行し始めたとき自分の技術が使えそうだとわかって、わずか数週間でものにした。ビオンテックはそれでいくら稼いだか知りませんが、日本ができたのは完成したワクチンをファイザーの言い値で買うことだけでした。いったいいくら払ったんでしょう。数兆円でしたっけ。何を言いたいかというと、研究が役に立つかどうかなんてやっている本人にもわからない。ビオンテックの技術はたまたますぐに役に立ったわけですが、ものによっては何十年後かに使われる日がくる。どれが役に立つかは前もってわからないんです。残念ながら。

きっとこれは使える技術だ。そう思えるような研究なら投資が集まるでしょう。実際、民間の研究開発費は桁違いです(残念ながら日本以外では、かもしれません)。そこに国がお金を出してもとても太刀打ちできません。むしろ、何の役にも立ちそうにないことを地道に支える。それこそが国の仕事だと私は思います。学校の教科書に書いてある知識は、人類がこうして長年にわたって積み上げてきたものですよね。

都合のいいことばかり言いやがって。あきれる方がいらっしゃることでしょう。たぶんその通りです。いま、私はアメリカの某大学で行われている研究会に出席しています。およそ役に立たないことをみんな熱く議論しています。だっておもしろいんですよね。わくわくする人はそんなに多くはないけど、ここには世界中から集まっている。ごく少数の人のわくわくのおかげで、役に立たない研究が猛烈に進歩している。それを今日も体感しています。ついでながら、この小さな研究会でも日本の存在感の低下は隠せません。一度遅れてしまうと、もう一度追いつくのは困難です。思うことはいろいろありますが、それはまた別の機会に。

2023/03/10Posted
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