今回の成果について一言で述べれば、”科学的には大きな成果だが、実用化にはまだまだ課題が山積”ということになります。残念ながら、10年で実用化できる結果ではありません。

NIF (National Ignition Facility)の研究者たちは強力なレーザーを用いて、重水素とトリチウムの核融合反応(DT反応)を引き起こすことに成功しました。レーザーによる入力エネルギー(~2.1MJ)より大きい核融合エネルギー(~3.2MJ)が発生したことは、科学的に大きな成果です。しかし、レーザは元々エネルギー効率の良い装置ではありません。重水素とトリチウムの燃料に照射したレーザーエネルギーを作り出すのに、100倍以上の電気エネルギー(~400MJ)が必要だったようです。つまり、エネルギー源としての実用化を考えた場合、400MJの電気エネルギーを使って、その百分の一以下の3.2MJのエネルギーしか得られなかったことになります。つまり、投入したエネルギーの99%のエネルギーは損失であり、現段階で新たなエネルギー源として使える状態とは言えません。

実用化のためには、①反応の持続、②燃料(トリチウム)の供給、③中性子による材料の損傷回避、などの課題を克服していく必要があります。①について、現状はレーザーを1回打って1回の反応であるため、エネルギーとして利用するためには連続的に核融合反応を引き起こす必要があります。②については、燃料として重水素は海水にありますが、トリチウムが天然に存在しないため、燃料供給系の確立が必要です。③については、DT反応で放出される14MeVの強力な中性子照射に経済的に耐えうる工学的な材料開発が重要と思われます。このような課題を克服していけば、核融合の潜在力は非常に大きいため、いずれ実用化できると期待していますが、10年での実用化は難しいのが現状です。

2023/01/26Posted
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