大変興味深い質問ですね.固体の結晶や鉱物は,結晶成長によってできますので,天然であれ人工であれ,成長のための空間が必要になります.したがって,人工の結晶をつくる実験室は,自然界よりも小さいので,天然の単結晶が,人工物よりも巨大になります.人工的に作られる単結晶は,実験室のスケールや合成装置の大きさに限りがあるので,地球上でもっとも大きな結晶は,天然の結晶になります.

地球の内核が鉄合金の単結晶の可能性の指摘は,内核の地震波速度の異方性(地震波速度が内核内の向きによって異なる性質)が鉄の結晶の軸方向の速度の違いに似ていることから,最も単純なモデルとして,単結晶の鉄合金で説明できるという仮説です.これは,鉄の多結晶がある方向にそろって存在(選択配向性といいます)してもよいので,根拠にとぼしいです.また,内核については,その後,深さによって異方性の程度が異なることや,内核にさらに中心部に不連続に速度が増加する性質が見つかり,内核の西半球(ヨーロッパ側)と東半球で速度が少し違うことなど,様々な性質が明らかになり,内核は複雑な構造をしていることから単結晶モデルは,信頼されていません.

それでは,地球上で実際に報告された大きな単結晶についてはどうでしょう.ご質問と同じことを疑問に感じ,実際に調べた鉱物学者がいます.この鉱物学者は,世界の地域や文献を調べ1981年にアメリカの鉱物学会誌に発表しています.その文献は以下ですhttp://www.minsocam.org/msa/collectors_corner/arc/large_crystals

また,日本語の本では,秋月瑞彦著の「山の結晶―水晶の鉱物学」にまとめられています.これらの文献によると,世界最大の結晶は,正確な記載は行われていないのですが,米国のコロラド州で発見されたマイクロクリン(長石の一種,KaAlSi3O8)結晶で,49mx36mx14mの大きさを持ち総重量15909トンとされています.正式に認定されている最大の結晶は,宝石で有名なベリル(緑柱石Beryl;Be3Al2Si6O18)の単結晶で長さ18m,直径3.5m,総重量380トンです.また,石膏の一種のセレナイトの大きな単結晶も有名です.https://gigazine.net/news/20060617_crystal_cave/ メキシコ・ナイカ鉱山の洞窟で発見されたこの最大の結晶は,長さ11m,直径4m,重さ55トンにも達します.

1 year ago1 year agoUpdate

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Past comments by 大谷栄治
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