「光速よりも速く動くことはできない。」

これは多くの人が一度は聞いたことあるかもしれません。この話は特殊相対性理論と関係しています。特殊相対性理論は20世紀の天才物理学者・アインシュタインが作り上げた理論で、それまでのニュートン力学の時空の考え方を一変させました。

物理理論を構築する際に、証明なしに使う前提のことを「原理」と呼びます。原理は「自然法則の大前提として要請」されるもので、この原理を土台にして論理展開して理論を構築するのです。さて、特殊相対性理論は、2つの原理の上に成り立っています。それが「特殊相対性原理」と「光速度不変の原理」です。特殊相対性原理は、「物理法則は慣性系で変わらない」というもので、ある慣性系で成り立つ物理法則は別の慣性系でも成り立つというものです。そして、光速度不変の原理は、誰から見ても光の速度は変わらないというものです。この2つの原理に作られた特殊相対性理論はニュートン力学に変わる相対論的力学を与えます。

さて、ここで次のような状況を考えてみましょう。

今、あなたは駅のホームにいて、目の前を時速100kmで通り過ぎる電車を見ています。そして、その電車の中で、大谷翔平選手がボールを時速160kmで投げています。この時、駅のホームから見たボールの速度は時速100+160=260kmに見えるはずです。

では、次に目の前を光速(秒速30万km)で通り過ぎる電車を見ているとしましょう。同じく、電車の中で大谷翔平選手が、ボールを光速で投げているとします。この時、駅のホームにいるあなたから見ると、ボールは秒速60万kmで運動している様に見える・・・・というのはニュートン力学的な考え方です。すなわち、光速よりも速い速度で運動する事が許されます。

一方で、相対論的力学では、不思議なことにこのボールは駅のホームから見ても秒速30万kmであるという結論を得ます。すなわち光速よりも速く運動することが許されないのです。

以上の様に、相対論的力学で考えると、光速よりも速く運動することが許されないという事が導かれるのです。

最後に一つだけ注意を。相対性理論は「特殊相対性原理」と「光速度不変の原理」に基づいて構築されていますが、これらの原理が必ずしも正しいとは限りません。もしかしたら、これらの原理が破れていてい、相対性理論が破綻する可能性もあります。そしたら、光速よりも速く運動する事も許されます。しかし、現在の実験では、相対性理論が破綻する様な事実は見つかっておらず、これらの原理も正しいだろうと考えられています。物理とは仮説(原理)に基づく理論と、それを検証する実験によって支えられているものです。したがって、今は正しいと思われている理論が実験によって間違っていたとなることも十分にありえますし、その時は新しい物理理論が必要となり、物理学が発展するきっかけになるのです。

2 years ago

Please read and agree to the Terms of Service and Privacy Policy before using.

Past comments by Hayato Shimabukuro(島袋隼士)
    Loading...