地球の軌道を横切って地球に衝突する可能性のある小惑星をNEO(近地球小惑星Near Earth Object)と言います.はやぶさやはやぶさ2が試料を回収したイトカワやリュウグウ,そして米国の探査機オシリスレックスが試料を回収したベンヌもこのようなNEOです.地球に衝突しそうな小惑星の実体を調べることもこれらの探査の目的でした.これらのNEOは8500個程度もあり,その軌道をモニターする必要があります.NASAはこれらのうちの多くのNEOについて今後100年以内の地球への衝突の確率を求めています(1).それによると,衝突の確率は,小惑星のサイズが大きくなると急激に低くなります.人類の生存に影響のあるカタストロフィを引き起こすのは直径が1km以上の小惑星と考えられています.直径1kmの小惑星の衝突するのは10万年に1度程度であろうと見積もられています.6600万年前の白亜紀末に恐竜を絶滅させたメキシコのユカタン半島に衝突した小惑星は約10kmの直径をもっていました.このサイズの小惑星の衝突は約1億年に1回と推定されています.2010年にロシアのチェラビンスクに落ちた隕石は約17m程度の大きさであったと推定されており,このサイズの天体の衝突は100年に1度程度と推定されています(2).このようなわけで,地球に衝突するかもしれない小天体(小惑星)を探すことは大変重要になっています.NEOの探索とそれらの軌道予測を行う組織には,公的な機関(例えばATRAS)(3)や天体観測のアマチュアを中心とする国際スペースガード財団(4)があり,国内ではこれと連携した日本スペースガード協会という組織を作って,NEOを発見してその軌道を予想する作業をしています(5). 一般には,大きな被害を引き起こす天体ほどサイズが大きく,発見されやすいと言えますが,そのような大きな天体は地球への衝突の確立は小さいといえます.天体の衝突に対応するためには危険な大きな天体をできるだけ地球から遠くで見つける必要があります.

最近衝突が予想されるNEOが発見されたのは2008TC3と名づけられた小惑星で2008年10月6日でした.この小惑星は直径4.1mで地球には24時間以内に衝突するというものでした.この小惑星は,2008年10月7日2:45に予測どおりアフリカの北スーダンに衝突しました.衝突した小惑星は,アラマハッタシッタ2008TC3隕石と命名されました.回収して調べたところ不均質な隕石でダイヤモンドを含むユレイライトやコンドライトからなる異なるタイプの隕石が混ざったものでした(6).この発見は,宇宙空間にある小惑星と地上に落ちた隕石とは同じものであることを示しています.

参考文献

(1)   https://cneos.jpl.nasa.gov/sentry/

(2)   https://www.britannica.com/science/Earth-impact-hazard/Frequency-of-impacts

(3)   ATLAS - The ATLAS Project (fallingstar.com)

(4)   https://www.spaceguard.or.jp/ASUTE/a17/News17H/News171.html

(5)   https://www.spaceguard.or.jp/html/ja/index.html

(6)   https://ja.wikipedia.org/wiki/2008_TC3

2 years ago

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