中国で食べて一番驚いたのは、カボチャを細切りにしてサッと油で揚げて「カボチャのフライドポテト」みたいなのを作って、その出来立てのホクホクのものに、軽く塩味とガチョウの卵黄を絡めてまとわりつかせた(カボチャの予熱で卵黄に微妙に火が入る)という料理です。
ガチョウの卵黄がからまったカボチャのフライドポテトは金色に輝いて神々しく、カボチャの甘みとガチョウの卵黄の濃厚でちょっとエグい感じと微妙な塩味がピッタリと合って、とても美味しかった。世の中にはこんな料理があるんだ、と素直に驚きました。名前は知りません。北京のレストランでした。
* * * * *
「豚の上質な脂身だけで作ったトンカツ」というのも凄かったかな。まんまトンカツに似た形。脂身の塊にパン粉の衣をつけて揚げたもの。これをレモンわさびで食べる。サクッとした歯ごたえの衣の奥に、沸き立つようなアツアツの脂身があって、この脂身が全然しつこくない。脂身の上質な部分だけを使っているのかな。脂身の嫌な感じが全然なく、豚の脂身が持つ独特のコクだけを楽しむ…みたいな。あれって、ちょっと食べるだけでもすごいカロリー量だろうな…と思いますけど、一度食べるとヤメられない。
広州のレストランの朝の飲茶で出ました。広州のこの手のレストランは「広東系ヌーベルキュイジーヌ」みたいなのが結構あって、見たことも聞いたこともないような創作料理が出ますけど、その1つの料理だったかと。店の名前は忘れましたけど、天河区のマンションが立ち並ぶ中にあるレストランでした。
* * * * *
中国の料理は何でも好きで、特に家庭料理が大好きですね。高級でもなく、珍しい食材も使わず、普通の庶民が食べているもの。日本人の自分には少々口に合わない味もある。ただ、その背後にその土地独特の食文化が潜んでいる。それを土地の人と一緒に食べながら聞いてみる。できれば一緒に作ってみる。そういう繰り返しの中で、中国人から「この日本人は真剣に私達の文化に興味を持ってくれているんだ」と思ってもらえる。「食事」という行為を通して、風土とか文化とか歴史とか民族とかも一緒に食べる。食事を共にした人たちと心が通じ合う。そういうのが好きなんだと思います。
* * * * *
上海ではタチウオをよく食べるのですが、油で揚げたタチウオをトマトソースで煮込んだものがあって、これがとても美味しかった。友人が家に私を招いてくれて、作っているところを見ながら、色々お話を伺いました。
友人は旧租界地域で古くから上海に生まれ育った人で、たぶん西洋料理の影響が家庭料理にもあるのか。御本人はそれが普通の上海の家庭料理だと思って特に意識はしていなかった。上海の他の地域の人に聞いたら、タチウオを油で揚げてトマトソースで煮込んだ料理なんか上海にはないと言う。別の人はあると言う。上海は歴史の浅い都市だけど、祖先がそこにやってきた時期と出身地によって、彼らが背負っているルーツが違う。だから食文化も異なる。それを「食べる」ことで実感する。
中国を舌で歩き、歴史を舌で読み、文化を舌で楽しむような体験。私が中国での「食」に魅了されているのは、こういうのが面白いと思っているからですね。
■黒色中国さんによる「上海の春節豪華料理」連投に滂沱のヨダレ。 https://togetter.com/li/940128 #Togetter @togetter_jpより
食べ物の話はキリがないのですが、この上海の春節豪華料理のまとめに、写真付きで色々と書いておりますので、よろしければご参照ください。