「有識者」かはあやしいですが「5年後」くらいならそこそこマシなことが言えるのではないかと感じたので書かせていただきます。LLMの発展によって失業者が少なからず出ること自体は確かだとは思います。しかし、メディアの煽りはやや過剰ではないかと思う部分があります。
もちろん、現状のGPT-4ですら凄まじい性能を発揮するのだから、5年後には……と想像するのも無理はありません。しかし、当たり前の話なのですが、AIによって「ある日、突然」大量の失業者が発生するなどということは有りえず、物事は少しずつ進行していくはずです。
たとえば、現状「誰でも書けるようなアフェリエイト目的の記事」が氾濫しているのはご存知かと思いますが、このような記事を主に人手で書いていた人はChatGPTのようなAIの登場によって苦しくなると予想できます。なぜなら、人に発注するよりもChatGPTに記事の元を生成させてそれを手直したした方が素早く記事が作れる見込みが高いからです。また、そのようなブログ記事の品質についてはあまり多くを求められないことも多いでしょう。このような状況では「単価が低い記事」の執筆で食っていた方々が苦しくなるのは予想できます。
より高単価な、独自の鋭い視点を持って切り込めるタイプのライターの仕事がなくなるかというと、どうでしょう。下手をすると仕事が増える可能性もあります。というのは、それこそ「AIで仕事がなくなるか?」みたいな記事や「AIに負けないためには」という記事の需要が発生する可能性があり、独自の視点で勝負できているライターは記事のネタが増えて大助かりということすら考えられるからです。
他の分野はどうでしょうか。たとえば、プログラマーについて言えば、現状のLLMはあくまでプログラミングの一部の工程を代行してくれるだけです。もっとLLMが進化すればプロジェクトを丸ごと分析させてバグや可読性の低い部分などの指摘もできるようになるでしょう。しかし、LLMがプロジェクトのコードを解析してミスなくリファクタリングできるようになるまで5年では厳しいでしょう。よしんばできるようになったとしても人手によるチェックは必ず必要ですし、その人手によるチェックができるためには、当然プログラマにも相応のスキルが求められます。
一方で「詳細仕様書をコードに落とし込むだけ」という人(がどのくらいいるのかは知りませんが)の失業リスクは決して低いとは言えません。折しもノーコード・ローコード開発がいよいよ「普通に」使い物になってきていますから、新しい時代の開発スタイルに適応できない限りは失業を余儀なくされる部分はあるでしょう。
しかし、ここでも注意が必要なのですが「詳細仕様書をコードに落とし込むだけ」の作業がノーコード・ローコード開発によって不要になったとして、ある日突然、全てが置き換わるわけではない、ということです。従来その作業をしていた人だってノーコード・ローコード開発を勉強することで何とかついていこうとするはずですし、会社だってそのような人材をいきなり解雇するのが得になるかは怪しいです(日本の場合は解雇のための条件が厳しいですし)
それでも適応しようとしない(できない)人は職を追われることになるかもしれません。それも決して無視できる数ではないでしょう。ただ、もし「街中を多くの失業者が職を求めて彷徨う」という光景を想像されているのだとしたら「変化は連続的に起こる」ということと「連続的な変化に人間は適応しようとする」ということを思い出してもらえるといいのかなと思います。
もちろん、これも私の「予想」なので、5年後には本当に街中に失業者が溢れる世の中になっている可能性も0とは言えませんが、今のところそこまでの兆候はないかなというのが正直なところです。