音声入力です。

否定派というほどではありませんが、「音声で入力するくらいなら絶対にキーボード入力の方がいい。確実で速い」という信念をずっと(ほんとうにずっと)持っていました。

でも数年前に、散歩しながらふとiPhoneの音声入力を試してみたところ「これ、意外に良いのでは?」と思い始めました。それから音声入力大好きになりました。

もちろんそこには音声を認識して漢字かな交じりのテキストに変換する技術の発達や、そもそもマシンパワーが格段にアップしたことが背後にあって「現代だから使えるようになった」という側面はあるでしょう。

でも、もしも「絶対キーボードがいい」と思って試さなかったらと思うと恐くなるくらい、いまは音声入力を便利に使っています。

キーボードよりも音声入力が速いかどうかは正直わかりません。速さが問題なのではなくて、書く側(つまり自分)の意識の違いが大事だと思っています。

考えながらキーボードで文章を書いているときには、かなり「かっちり」と文章を決めていく感覚があります。誤字脱字はもちろんのこと、何を漢字で表記するか、どこで段落をわけるか、話のつじつまはあっているか……そういったことを決めているのです。その結果、ある程度形になる文章ができてくるわけですけれど、その分だけ負担も大きくなっていますし、時間も掛かります。

それに対して音声入力の場合はもっとずっと「ゆるやか」な気持ちで文章を書いている(流し出している)感覚があります。キーボードで書いているときに気にするような話は「細かいこと」として無視無視。誤字脱字とか表記や話のつじつまさえも「あとでなおす」のが前提として書く気持ちになります。そしてそれがいい。

音声入力の場合には「ゆるやか」に流し出すので、できあがったものは完成品からはだいぶ遠いものの、少なくとも頭や心からテキストに概略を移すまでの時間はかなり短くできます。そのスピードは馬鹿に出来なくて、テキストに移すまでのスピードが速いことによって、キーボードに向かっているときには書き留めるのが難しい発想も引き出されることがあるのです。

ただし、現在の音声入力もまだ完全ではありません。細かい誤字脱字や同音異義語はまだいいのですが、調子にのって話しているとときどき数単語が抜けるときがあります。ここだけは注意したいところ。

自分の部屋でMacBookに向かっているときはキーボードをばんばん叩いて文章を書く方が好きです(現在もそうやって書いています)。でも、散歩しているときや、ソファでごろんとしているときに、思っていることをふわふわと書き留めるには、iPhoneの音声入力は最高ですね。

5か月

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結城浩さんの過去の回答
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