一度だけ、知人と世間話をしているときに、その話に思わず「それ、ネタにして書いてもいいですか?」と尋ねたことがあります。それが、最初で最後です。
あなたのようなご質問・ご依頼を受けることは、実は珍しいことですありません。
ご自分の人生や体験について、そういう方は誰しもが他の人とは断然違っている、壮絶過ぎる、自分では語り尽くせないほどのものだと思っているのかも知れません。ですが、それを人に依頼してたとえば小説が出来上がったとしても、それは、満足のいくものではないものに変わってしまっている可能性が高いと思います。そこに著者の思いが入ったときから、変わってしまうのが当然だからです。また著者というものは、自分が惹きつけられ、自分の心に響いたものに関してのみ、筆が動いていきます。人の依頼を受けてその人の人生を描くのは、小説の仕事ではないような気がします。
4か月