「小説の推敲に飽きてきたらどんなふうに気分転換をするべきですか」という問いに直接的に答えるのはなかなか難しいです。そこで勝手ながら次のように質問を書き換えてみました。

「文章の執筆・推敲・校正という作業がうまく進まなくなったときはどんなことをすればいいでしょうか」

私は物語に限らず文章を書くことをなりわいとしており、日々たくさんの文章を書いています。特に本を書くことが仕事の中心になっていますので、作業を効率よく進めることは非常に大きな関心事です。以下、自分が実際に行っている方法をいくつか書いてみたいと思います。

(0)寝る。

疲れていたり、たくさん作業を済ませたりした後では、うまく頭も心も動きません。なので、こりゃダメだと思ったらとっとと眠ります。天気が悪いときもどんどん寝ちゃいます。そして起きてから改めてトライします。寝るのは最高の気分転換であり回復方法です。

(1)机から離れて身体を動かす。

文章を書く作業は椅子に座り、机に向かってディスプレイを見、キーボードを叩くのが基本です。当然ながら身体全体は同じ姿勢を続けることになります。「どうも進まないな」と感じたときには意識的に机から離れ、軽く体操をします。普段から3分程度のリズミカルな音楽をストックしておき、その時間だけ身体を適当に動かしてまた机に戻ります。それだけでもまったく気分が変わりますね。

(2)散歩に出かける。

先ほどは3分ほど身体を動かす話でしたが、基本的に運動不足にならないように心がけています。うっかりすると一日中家にこもって書き物をすることになってしまいますので、意識的に朝や夕方に散歩をしています。寒かったり天気が悪かったりすると20分程度ですけれど、天気がいい場合は買い物も兼ねて一時間ほど散歩することもあります。

(3)場所を変える。

身体を動かすのは大事ですが、文章を考える場所を変えること自体も大切です。先ほどは「机に向かう」と書きましたが、別の部屋で(あるいはトイレやお風呂で)文章について考えるのも大きな気分転換になります。単に気分転換を行うというよりも「違う視点で自分の書いているものについて考える機会を作る」という表現の方が近いかもしれません。

  • いま書いている章でもっとも大切なことって何だっけ?

  • ここを読んでいる読者さんはもっとスピーディな展開を期待するかな?

  • もしかして自分は必要以上にこだわりすぎてないか?

たとえばそんなふうに自問するのもいいですね。同じ机についたままで問いかけるよりも、場所を変えて「あらためて問う」ほうが効果的だと思います。

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その他にもたくさんの「気分転換」があると思いますが、頭の片隅や心のどこかには必ず文章の一部を残しておくのがいいです。どういうことかというと、たとえば「調子が悪いから一週間まるまる文章から離れてしまう」みたいな方法はあまり良くないと思います。その意味では「書き進めなくてもいいから、すでに書いたものに毎日ちらちらと目を通す」みたいにした方がいいと思います。

以上、思うことを書きました。何かの参考になれば。

 * * *

話は少し違いますが、関連するかもしれない話題を以下にリンクします。

◆文章が完成間近になったときに感じるつらい気持ち(文章を書く心がけ)|結城浩

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