お困りだとは思うのですが、全OKか全没かの2択という編集者は、私目線では害がない編集というか、担当ガチャ的には「当たり」に分類される方かと。
新入社員の時、ヒットを連発する先輩とヒットを出せない先輩の違いを見極めようと、じっと観察していた時期がありました。
色んな人の打ち合わせを盗み聞きしましたが、結論としては、ヒットを出す編集も、そうではない編集も、基本は同じようなことを言っているな…という印象でした。
ヒットを出さない先輩も仕事熱心で、誠実に一生懸命「ここはこうしたら…」と丁寧に作家さんと打ち合わせし、修正指示を出していました。
その打ち合わせ後に上がってきた漫画を読んで、新入社員ながら震えました。
全く面白くなかったからです。
あの大量の直しは一体なんだったのか?
あれだけ修正の話をしながら、結果この作品にOKを出したということは、もしかすると直す前の方が面白かった可能性すらあると感じました。
編集者のスキルの第一関門は、ジャッジの正しさ、漫画を見る目であり、そこが間違っていると、面白い漫画を無茶苦茶にしてしまうこともある。
今あなたは、担当に全没にされてしまうと感じていますが、そうではなく、「読者からどう見えたか」という事実のみを伝えられている、と捉えてみて欲しいです。
「書きたいテーマなどを説明しても「わからなかった、インプットして」と言われた」とのこと。
書きたいテーマを否定されたのではなく、読んでそれが解らなかった・伝わらなかったという事実を伝えているだけです。
どうすれば、そのテーマが胸に迫るのか、グッとくるのか?
それは漫画表現の話です。
最もクリエイティブな部分であり、漫画家であるあなたの方が、編集者の考える浅知恵よりも、良いアイディアが出るに決まっています。
「ネームを出せば「わからない」とばっさり切られます。その後の展開を意識したシーンの意図なども聞き入れてもらえません」とありますが、
映画館みたいに読者を閉じ込めて、必ず最後まで読ませることが出来るなら、その後の展開のために前半に意味不明なシーンが入っても大丈夫かもしれませんが、基本、読者に読み続けることを強制することはできません。
「面白くない」と思った瞬間に読むのをやめてしまうのが読者です。
では、どうすれば「必要なシーン」を読者に「面白い」と感じさせて読ませ続けることが出来るのか?
これも漫画表現の話です。
最もクリエイティブな部分であり、漫画家であるあなたの方が良いアイディアが出せるでしょう。
「問答無用で没にされた」と受け取るのではなく、「現状、そう見えるんだな」と受け取ってください。
その部分は直せるのか?直すぐらいなら別のものを描いた方が面白いものが出来るのか?
それも、作家であるあなたの方が判断できるかと思います。
商業誌で描くのが初めてとのこと。
今後、「ここをこうした方が読みやすい」とか「この設定は取った方が得策ですね。多すぎます。設定をこう変えて…」等々言う編集者に必ず出会うと思います。
運よく本当に能力があり、その指示が正しい時は最高のバディとなるでしょうが、悲惨なのは木を見て森を見ずのような編集者に当たった時です。
「確かにここだけを見ると、その修正で読みやすくなるかもしれないが、このコマを大きくしてしまうと肝心の見せ場の印象が下がってしまう。なにを強調したいのかが薄まり、結果、ずーっと一本調子の大声で話し続ける漫才のように、笑いどころが解らず、漫画として取っ散らかってしまう」
みたいなことが多々起こります。
こういう視野の狭い編集者は頑固なことも多いです。
なにせ、確かにそこだけで判断すれば正しかったりするので、「でも、ここが読みにくいと読者はこのページで離脱するので、大きくすべきです」などと修正方法がこれしかないと言い出し(視野が狭いので)、見せ場を立たせる方法は別に考えろと言って、結果ドミノが倒れていくように漫画を崩していきます。
「読みにくい」としか言わない編集者であれば、読みにくさを解消すればいいだけなので、逆にあえて動きや状況を見せる絵を描くのをやめ、セリフだけのコマにする等、その作品を面白くするための色んな修正方法を作家さんは考えつくと思います。
とりあえず2か月だけでいいんで、
「私の担当者は、当たりなんだな」と思って、打ち合わせに臨んでみてください。
言い方とかね、ちゃんとその旨説明しろとかね、色々その人に私だって言いたいことありますよ。
色々考えた上で読んだ感想しか言わないのではなく、本当に何にも考えてないヤツなのかもしれません。
まぁでも、そういう不満にリソースを割いても、あなたが損をしちゃうんで。
現状を最大限利用する方向を考えた方が、絶対あなたにとって得です。
あなたが思い描いていた理想の編集者ではないかもしれないけど、あなたへの害は客観的に見て少ない編集者だと私は思います。
面白い時には全OKしてくれる、という良い部分にもっと目を向けてみてください。
もしそれでもダメだったら、またこちらに来てください。
別の方法を考えましょう。