これは…! 誰もが陥る可能性のある悩みであり、これこそが編集者が必要な理由の1端です。
人間、多かれ少なかれ思い込みに囚われるものです。
思い込みというより、自分から見える景色、が皆それぞれある。
忘れがちなんですが、「漫画を描く」という行為そのものも実はエンターテイメントですよね。
描くこと自体が自分自身にとっての楽しみ、エンタメでもある。
”意外性のあるキャラクターが好き”とのこと。
こういうキャラを考えたり、描いたりすることが、あなたにとって楽しいことなわけですよね。
大事なことなんで先に書いておきますが、あなた自身が楽しんで描くというのは100%正しいです。
さて、「意外性を作る」っていうのは読者に「サプライズをしかける」行為です。
それ自体も最高オブ最高!
…なんですけど、「自分から見える景色」と「他人から見える景色」は違うってことを実感してもらうために、TVのバラエティでやってるドッキリ系の番組を思い出して欲しいのです。
私はお正月に放送される『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろかSP』が大好きなんですけど、ご覧になったことありますか?
視聴者から沢山「あなたの夢」を募集して、それをサプライズで叶えてあげる、という番組です。
ずっとずっと憧れてきた人に一生で一度でいいから会いたい、という夢を持っている人のところに、憧れのスターが会いに行くなど、他愛のないものが多いんですけど、なんかね…たまに号泣するぐらい感動するんですよ。
いかに驚いてもらうか、視聴者にサプライズを仕掛けるわけですが、根底にあるのは「その人を喜ばせたい」という想いです。
夢が叶った時人はどんな顔をするのか、どんな風な気持ちになるのか、それはある意味想像通りなんですけど、でもね…やっぱり本物の喜びというのは凄いですよ。
喜ぶ視聴者の姿も尊いし、人を喜ばせることが出来たことにほっとしたり感激してるスターの姿も素敵で胸を打たれます。
一方、同じくサプライズをしかけると言っても、喜ばせるため、ではなく、びっくりさせるための番組もありますよね。
作り方自体は完全に『夢をかなえたろか』と同じです。
サプライズをしかけるターゲットに対して、いかに驚いてもらうかを仕掛けるわけですが、そこにあるのは仕掛け人側の「ビックリさせたい!」「ドッキリが大成功したら面白い!」という気持ちです。
面白いと感じるのは「仕掛け側」なので、仕掛け人側に視聴者を共感させる番組構成となっています。
だからまんまと罠にはまってビックリした人は、怒ってみせたりする時もあります。
その反応も面白い。
さて。
この「サプライズを仕掛けられた人」というのが「読者」です。
サプライズに対して怒った人がいても、TV番組の場合は、視聴者を作り手側と共犯関係にする構成にしているので成立しているわけですが、漫画の場合は作者が読者にサプライズを仕掛けているだけの状況です。
すると、作り手側である漫画家にとっては「ドッキリ大成功!」だとしても、読者にとっては「不快」ということは当然あり得ます。
現状のあなたの漫画は、そうなっているのかと。
「サプライズを仕掛ける」こと自体は大賛成です。
というより、良いサプライズは絶対に仕掛ける必要があります。
あなた自身もサプライズを仕掛けるのが好き。
だから今度は、仕掛けられる側の気持ちも考えるようにしてみましょうか。
”一見優しそうなのに実は執念深い、一見おとなしそうなのに実はビッチだった”というヒロインが好きとのこと。
全然いいと思いますよ!!
優しい天使のようなヒロインなんだけど、実は執念深く色々やっちゃうほど彼のことが大好き!!ってラブコメとか、成立させる方法なんて無限にありますよね。
だから、そういうヒロインが読者に受けないんじゃなくて、「実は執念深かった!」ということが明かされた時に、読者が「えー!嬉しい!」とか「面白いじゃん!!いいキャラ!!」という感情に読者がなるように設計しているかどうかの話です。
「どんな展開だったら読者が喜ぶかな?」「こういう風にサプライズで見せたら、読者は絶対喜んでくれるんじゃないかな…!!」って考えながら構成してみてください。