読書を勧めますかね、具体的には鴨長明『方丈記』です。
読むのは後半部分で構いません。
なぜかと言えば、人間関係についてかなり誠実に書いた本と言えばこれだからです。
たとえば長明は「都には4つの害がある」と書きます。
地震、火事、竜巻と続けて「人が多いことで被害を広げる」と書くあたりは実にその通りなのですが、最後に「人間関係」と書くのはなんともケレン味が効いています。
まさしく、人が集まらなければ人間関係とその害もないものです。
では長明が考える「人間関係の害」がない状況はどうかと言えば、彼が隠居した都から少し離れた山での生活を指します。
そこには人が集っていないので地震が起きても倒れてくる家屋はなく、燃え広がる家屋もなく、竜巻が起きて逃げ道がないこともない。人間関係においても逃げ道がないことはない、というわけです。
他方、長明の隠居生活は孤独ではありません。彼自身「その意思があればいつでも都を尋ねることができる」ことを隠居先の良い所としています。
すなわち、「行きたいと思えばいけるが、離れたいと思えば離れられる」距離こそが彼の考えた理想の生活だったのです。「ゆく川の流れは絶えずして……」という冒頭文のみが有名なこの古典は、後半の山生活の楽しさをこそ読むべきでしょう。
彼はその山での人間関係の快適さを「これでは仏教修行がはかどらない」と実に楽しげに記しています。
色々書きましたが、あなたを変えられるのはあなたしかいません。
どんなに優れた本も助言も、それ自体があなたを変えることはありません。
質問者さんは「どう行動すればいいか」と聞いていますが、ここはむしろ「なにか私の役に立つことを教えてください」と書いてドーンと構えていれば良いように思います。
”変わらなければならない”と考えたのは質問者さんです。なら当然”どのように変わるか”を考えるのも質問者さんです。ここでもあるいは他の場でも様々「助言」は受けるでしょうが、質問者さんが「これが良い」と思わない助言は役に立たないのであり、「これが良い」と思う助言こそ-他の人から見ればどんなにくだらない回答でも-一番価値ある助言なのです。
『方丈記』以外に人間関係で良い本と言えばひとつは河合隼雄の『こころの処方箋』をあげます。精神科の臨床医として数々の患者を見てきた優しい本です。
せっかくなので反対の本もと考えますと中島義道『うるさい日本の私』が挙がります。
こちらは著者がひたすら日本の「うるささ」に文句を言う本です。それはひとつに騒音、そしてもうひとつは「そこまでしなくていいじゃないか」と、うるさい著者を”静かにさせようとする周りの声”です。己の道をいく人の生き方として参考になるでしょう。
いずれかの本があなたの役に立てば幸いです。