浪人してがんばって不合格、となればショックは大きいですし、自信を失ったり、無気力になったりするのはまったく無理もないことだと私は思います。もちろん人によりますけれど、そんなに簡単に人間の気持ちは切り替わりません。前向きな気持ちにはなかなかなれないものですし、どんな活動を始めようとしても「自分は不合格だった」という思いがよぎるのは、少なくともしばらくはしかたがないことです。「時間」は必要です。

授業をサボりがちでゲームばかりという行動は、ある意味では自分の心を何とかして保っている状態といえなくはありません。親御さんとしては心配でしょうけれど、いろんな意味で併走してあげる必要があるのかもしれません。

大人からすれば、大学入試というのは一つのステップとして見ることができますけれど、受験生当事者にしてみれば、自分のこれまでの最大の挑戦となることが多いでしょうから、その事実を何とか心が受けとめ、消化するまでには時間が掛かるものです。

表面的に観察できるのは行動や言動しかありませんけれど、本人の内側では嵐のように揺れ動いている心があります。ときには「こんなことじゃいけない」と思うこともあるでしょうし「どうせ自分なんて」という揺りもどしもあるでしょう。心が嵐の海で転覆しないようにするためにたくさんのエネルギーが使われている場合もあります。

そのような状況をどうやって変えていくかまでは私にはわかりません。それは人それぞれです。何らかの「出会い」が功を奏する場合もあるでしょうし、時間に応じて少しずつ変化が起きる場合もあるでしょう。荒療治が効く場合があるかもしれませんし、荒療治が逆効果になる場合もあるでしょう。これは本人にとっても、またご家族にとっても試練のときといえます。

「こうすればうまくいく」という方法を提示することはできませんし、そもそも、すぐに解決する方法があるかどうかもわかりません。「祈ることしかできません」という気持ちになるのは本当にそうだと思います。どうしたらいいかわからないけれど、その状態で何とか「ぐっ」と踏みとどまり、どうしたらいいんだろう、ああすればいいか、こうしたらどうか、ということに心をつかって時を過ごすことにも意味があると私は思います。

本人の気持ちがある程度整理がついて、おさまるところまでたどり着くのを待たなくてはいけないという意味では、親御さんとしては「放っておくしかない」のですけれど、本当の意味でほったらかしにするわけではないというのが難しいところです。息子さんが語るであろう無気力な言葉を受けとめる相手となる必要がありますし、息子さんの状態がどうであっても存在を丸ごとそのまま受け入れているという気持ちを持ち続ける必要があります。その意味では、息子さんが「浪人の末に不合格」という現状に立ち向かう人生初めての大きなチャレンジをまさにいま行っているのと同じように、ご家族の方もまた「そのような状態の息子さんを何とかしっかり受けとめる」という人生初めての大きなチャレンジを行っているといえるでしょう。

「すぐ」には答えは出ませんし、「こうすればいい」という秘策もありません。でも、息子さんをはじめとするご家族がいま「大切な時間を過ごそうとしている」というのはまちがいないと思います。親御さんも心の健康に注意しつつ、がんばりすぎず、がんばってください。

7か月

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