株式市場には、効率的市場仮説という学説があります。この仮説は、株式市場は現時点で投資家が利用可能なすべての情報が株価に織り込まれており、どのような情報や手法を使ったとしても超過リターン(投資家が取るリスクに見合ったリターンを超えたリターン)を得ることはできないというものです。これまでの長いファイナンス研究の歴史において、効率的市場仮説は概ね支持されています。

効率的市場仮説に従えば、たとえAIを使ってつぶさに分析したとしても、AIが予想する際に利用するのはあくまで公開されている情報なので、超過リターンを得ることはできません。

一方で、人間の心理と経済学・ファイナンスとの関係性に関する行動経済学(ファイナンス)の分野からは、株式バブルやその崩壊後の低すぎる株価に見られるように、人間の心理的バイアスによって効率的市場仮説が成り立っていない状況が存在するという批判があります。人間には必ず心理的バイアスが存在するため、そうしたバイアスを利用することによって株式投資で超過リターンを得ることは可能かもしれません。ただし、株価を過剰に高くしたり・低くしたりする心理バイアスがランダムに生じている場合は難しいです。そのため、投資にまつわる一貫したバイアスの法則を見つけ出し、それを誰にも言わず(世間に知られた瞬間そのバイアスは株価に織り込まれます)株式投資を行えば、理論上は可能かも知れません。とはいえ、誰にも知られておらず、かつ取引コストを超えてリターンを得るバイアスを発見することは困難を極めるでしょう。

しかしながら、”必ず”ではありませんが、相当程度の確率で自分の資産を安定的に増やすこと自体はできます。これまではリスクとリターンは比例関係にあるという文脈のもと、超過リターンを獲得することは難しいという話をしましたが、裏を返せば、自分が取るリスクに見合ったリターンは獲得できます。

株式市場は長期投資であればプラスサムゲームの側面があります(短期売買はマイナスサムゲームです)。つまり、株式投資は必ず誰かが儲かれば誰かが損するというわけではなく、経済・市場の発展によって、絶対的な株価の水準は上昇します。下の図は、GDPと株価の長期的推移に関するグラフです。灰色のエリアが世界のGDPの推移を示し、灰色の折れ線グラフが世界全体の株価指数を示します。このグラフからは、長期的な世界のGDPが増えるにつれて、(短期的な上下はあるものの)長期的には株価の水準も上がり続けていることが分かります。

(出典:リフィニティブ)

したがって、適切に長期・分散投資を行えば、よほどのことが無い限り投資した株式の価格は上昇します(これは超過リターンを得られるということではない点には注意ください)。

最後に、1番どこで失敗しやすいかについてですが、個人的には、バブル的な高値掴みをする可能性があるため、トレンドを後追いすることかなと思います。例えば、最近だと仮想通貨が儲かるということが一般的に認知された時点で仮想通貨に投資しても、実際にはバブル的な水準にあったためその後暴落しました。
詳しくは、ベストセラーではありますが、ウォール街のランダム・ウォーカーを読んでいただければ非常に参考になると思います。

1年11か月更新

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積惟美さんの過去の回答
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