
彩恵りり🧚♀️科学ライター✨おしごと募集中:情報 (データ) そのものに質量が存在するのかというのは難しい問題だけど、これには2通りの答えがあると思うよ。1つは "質量は存在する" で、もう1つは
"質量は存在しないが等価である" だよ。全然違うね!
まず、既に他の方の回答にある通り、情報ってなんぞいってことになるよ。例えばコンピューターの場合、何かしらの方法で0か1かを表す形式でデータを表しているよ。一番手っ取り早いのは電荷を持たせる方法なので、千葉さんの回答にある通り、電子の重さの分だけわずかながら増減があるので、情報に質量があると言えるよ。ただし、橋本さんの回答にある通り、情報を表す形式にはいろいろあるので、やりようによっては情報の質量はマイナスだ、といえなくもないよ。こうしてみると、情報に質量があるというには、その形式を指定しないといけないという点で、ずいぶんと人為的に見えるね。それこそ、E=mc²のようなつながりはないのかな?この有名な方程式の場合、エネルギーそのものに質量はないけれども、質量と等価に変換が可能と言えているわけだし。
実は、情報そのものに質量は存在しないものの、情報は質量と等価であり、相互変換が可能だという考えは一部にあるよ!そしてE=mc²の式のように、情報はエネルギーとも等価であるともいえるよ!情報やエントロピーというのが、何となく数学的にしか存在しないフワッとしたものではなく、物理的に存在するものだという考えは古くからあり、その発展形として「質量・エネルギー・情報保存則」という考えが提唱された感じだね!考えてみれば、質量やエネルギーを実在するものとして私たちは扱っているけど、
"質量を持つ物体" とか "エネルギーを持つ光" とかは実感できても "質量そのもの" や "エネルギーそのもの"
というものは想像しがたいものだよね?情報が物理的に存在するものであるという考え方は、質量やエネルギーと同じく、何かしらの物体や現象に貼りつけられたラベルのような存在である、という考え方があるにはあるんだよ。ちなみに、ここで言う情報というのは、宇宙の根源的な存在である素粒子を表すラベルであると考えているよ。例えば電子という素粒子は、電子という名前の素粒子が存在するのではなく、電荷-1.6×10⁻¹⁹C、質量9.1×10⁻³¹kg、スピン1/2、レプトン数1……といった複数の情報の塊である、という感じで捉えているよ。
ただ、情報が物理的に存在するものである、という考え自体は、根本まで戻すと1929年から!ってなるくらい結構古いのに対し、質量・エネルギー・情報保存則というのは2019年にMelvin
M.
Vopson氏によって提唱されたかなり新しい概念だよ。この考えが正しいかどうかというのは検証が必要なので、前段に書いた「情報は質量と等価である」というこの回答は、後々見た時に全く誤った古い考えになっている可能性もあるよ。なので、今はそういう考えが一部にある、という程度のニュアンスで受け止めてほしいかな。
[質量・エネルギー・情報保存則の元論文および関連研究]
●Melvin M. Vopson. "The mass-energy-information equivalence principle". AIP
Advances, 2019; 9, 095206. DOI: 10.1063/1.5123794
●Melvin M. Vopson. "Estimation of the information contained in the visible
matter of the universe". AIP Advances, 2021; 11, 105317 . DOI: 10.1063/5.0064475
[前提研究]
●L. Szilard. "über die Entropieverminderung in einem thermodynamischen System
bei Eingriffen intelligenter Wesen". Zeitschrift für Physik, 1929; 53, 840-856.
DOI: 10.1007/BF01341281
●R. Landauer. "Irreversibility and Heat Generation in the Computing Process".
IBM Journal of Research and Development, 1961; 5 (3) 183-191 DOI:
10.1147/rd.53.0183
●J. A. Wheeler. "Information, physics, quantum: The search for links". (in
"Complexity, Entropy and the Physics of Information", edited by W. H. Zurek.)
Addison-Wesley, Redwood City, CA, 1990; 354.