まず、宇宙に始まりがあるという部分について。この考えは、宇宙の膨張が発見された1920年代末に生まれたよ。それまでは、宇宙には始まりも終わりもないし、現在のような状況が永久に続くという定常宇宙論が支持されていたね。ところが、宇宙が膨張していると言うことは、過去にさかのぼると収縮し、いつかは1点に潰れてしまうから、始まりがあるじゃないか!ということで、当時驚きの発見だったんだよ。
では、過去に宇宙が1点だったとして、その1点はどのようにして生まれたのか、という部分が問題になったよ。現在最も支持されているのは、宇宙は無から誕生したというものだよ。無は定義こそ簡単だけど、正確な理解は中々難しいよ。無は文字通り何もないところで、物質もエネルギーも無ければ、時間や空間すらも存在しないよ。この点で、宇宙に始まりがあるとすると、それまでに存在していた空間はなにか、という質問に答えることはできないよ。何しろ無は空間ですらないからね!ただし、無というのは全てのパラメーターが無=ゼロで固定されているのかといえば、そうじゃないよ。現在の物理学の考えでは、自然界はパラメーターが特定の値で永久に固定されるというのはあり得ない、という不確定性原理という考えがあるよ。これは実験的にも確かめられているよ。特定の値はゼロを含むので、それは無でも同じであり、常にゼロではない値を取る可能性が発生するよ。このあたりの間隔は、宝くじやガチャのようなくじ引きシステムと似ているところがあるよ。これらの大半は非常に価値の低い値しか取らないように、無で起こるくじ引きの大半の結果は、その後に何も残さないさざ波でしかないよ。でも、1等やSSRを引く確率は、低いけれどもゼロじゃないので、たまに大きな波が発生し、それが宇宙の "種" になるよ。この種の1つが、私たちが現在いる宇宙になった、と考えられているよ。なおこれは蛇足だけど、現在の宇宙空間においても、そのような宇宙の種が偶然にも生成される確率はゼロじゃないよ (ただしそれには平均して10^(10^(10^56))もの時間が必要だよ!単位がない?年でも秒でも誤差でしかないよ!) 。その意味で、実は今の宇宙は別の宇宙から発生したのであって、無が出生地ではない、という可能性もなくはないよ。ただ、その別の宇宙はどこから生まれたのか、という問題になっちゃうので、結局のところどれかの宇宙は無から生まれた、というのを避けることはできないよ。
ただ、宇宙に始まりがあったという考えは、誰も実験室で宇宙を生み出したことはないということもあるし、全ての物理学者の支持を受けているわけじゃないよ。少なくない人々が、宇宙は始まりも終わりもなく永遠に存在する、という考えを持っているよ。現在我々がいる宇宙に始まりがあったように見えることは否定しないものの、宇宙そのものはその前からあった、という考え方だよ。ある人の人生に始まりはあっても、その前の時代は存在しないわけではなく、人々は歴史を刻んできた、という感じだね。これには主に2つの考え方があるよ。1つは、宇宙はどこかの段階で膨張から収縮に転じ、収縮して1点に潰れた後に膨張へと跳ね返る、というサイクルを繰り返しているという説。もう1つは、より多次元の空間の中に埋め込まれた低次元の "膜" が宇宙の姿であり、膜同士の衝突によって発生するビッグバンが、新たな宇宙の始まりのように認識される、という説だよ。ただ、それぞれの説はそれぞれに問題を抱えているよ。収縮と膨張を繰り返しているという説の場合、なぜ今の宇宙は収縮の気配がないのか (それどころか加速膨張をしている) という問題を説明できないし、収縮で潰れ切った後の膨張というのをうまく理論的に説明できていないよ。膜同士の衝突は、これを数式に変換する作業がどうにもうまく行ってないので、膨張と収縮を繰り返す説より更に支持者が少ないよ。と言うことで、宇宙には始まりがあり、宇宙の周りには空間もなにもない無だった、という感じになっているよ。