自分のブログに技術書の書評を書くけれど、何をどのように書けばいいかわからないということですね。あなたが書いておられるように「読者の気持ちを考える」というのはとても大切だと思います。何と言っても《読者のことを考える》のが文章を書く場合に大切なことですから。そしてそれがピンと来ないということは、読者のことがよくわかっていないということになります。
あなたのご質問を読んで思ったのは、あなたは二つのポイントを狙っているということです。一つ目のポイントは「本の理解をさらに深める」で、これはあなた自身のためですね。もう一つのポイントは「書評を読んだ人にもためになる」で、これは読者のためですね。素朴に考えるなら、この両方を満たすためには、あなたと読者の興味・関心や知識の度合いが似ていることが必要になると思います。もしもあなたと読者の属性が大きく違うならば、読者はあなたの書評を読んで「ん?」と思う危険性があるという意味です。
もっとも、どの本を取り上げるかによって読者の属性はだいぶ絞られますので、あまり大きくずれることはないのかもしれませんけれど、技術書といってもたくさんあるのではっきりしたことはいえません。
以上を踏まえた上で私が思うポイントをいくつか挙げてみます。
どのような読者向けの何という本に対する書評なのかをタイトルや冒頭でわかりやすく伝えること。これは、読者が読み進める前に、自分が(その本の、またあなたの書評の)想定読者か否かをわかりやすく伝えるためです。
全体的にどういう範囲を扱っているかを伝えること。もっとも確実なのは「目次」を示すことですが、そこまでしなくても「どういうことからどういうことまで書かれているか」を述べることで、読者が全体像をイメージしやすくなります。
特記すべき点をピックアップして具体的に述べること。対象読者や全体像は、たとえばネット書店の書籍紹介を見るだけでもだいたいわかります。でも書評というからには、あなた自身が特に紹介したい点が何かほしいところです。本を読まなければ気付かないことや、「これはいい!」と思えた点を具体的に書くのです。
以上述べた三点はごく一般的な話で、すぐにでも適用できると思います。それとは別に、あなたに強制するわけではありませんが、私が個人的に大事じゃないかなと思っているのは次のポイントです。
批判的な内容や、良くないと考える点を述べる場合には、細心の注意を払うこと。本を擁護せよと言いたいわけではありませんが、書評の中にはしばしば的外れな批判が見られる場合があります。特に、その本の全体を見ずに、本のごく一部分を切り取って鬼の首を取ったように批判するケースがあり、それは読者にとってあまり益にならないと思っています。
以上、思うところを書きました。何かの参考になればうれしいです。良い書評記事は読者にとって大きな助けになりますので、がんばって書いてくださいね。
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なお、結城自身がお仕事として書評を書くことはめったにありませんが、ないわけではありません。そのことに関連した読み物が以下にあります。
◆ネガティブなセルフブランディングの危険性(仕事の心がけ)|結城浩