けっこう前にいただいた質問なのですが、先日、4月25日に無事発売されました『灰と幻想のグリムガル level.20 かくて星は落ち時が離れた』、実は、最初の計画からずれ、また、4月に出せるかどうかも、ぎりぎりの状況だったこともあり、長らく回答できませんでした。

 というわけで、20巻は4月発売で、次巻、21巻は翌月、5月発売を予定しています。今のところ、何かおかしなことが起こらなければ、なんとか5月刊でいけるのではないかという情勢です。

 どうやら20巻で終わりだと思っていらっしゃる方もいるようですが、まだ終わりません。

 20巻くらいで終わらせようかな、と考えていた時期もありました。ただ、20巻ではちょっと収まらない感じだったので、あと数冊、21巻、22巻、それくらいで締めくくる方向で、ある時点までは進めていたのです。

 理由はいろいろありますが、一つには、アニメ化が決まったくらいの段階で、この流れだと20巻程度で終わるかな、という目安をつけていました。このことは、当時の担当編集者などにも漠然と話していたような気がします。それもあってか、担当編集者も、そのくらいで終わるんだろうなというふうに考えていたみたいです。

 終わらせよう、と言われたわけではないのですが、まあそろそろ終わらせてもいいかもね、いいところで終わらせるのも悪くないじゃない、といったようなことは言われました。続きが出せないような状況ではない、つまり、続刊を出せばそれなりにしっかり売れるので、続けることはできるけれども、無理して続けなくてもいいんだよ、といったような意味で言ってくれたのだと思います。

 正直、これだけの長さの物語となると、一冊書くのもなかなか大変です。積み上げてきたものの重さで、身動きがとりづらくなってきますしね。単純に、モチベーションを維持するのも難しい。僕はそもそも同じことをやるのが大の苦手なので、新しいことならいくらでも手を出したくなるし、実際、手を出します。続き物を継続させるとなると、特別な気合いが要るのです。

 定期的な連載なら、まだ時間に追われてひたすらやっているうちに、なんとなく続けられそうな気がしますが、ウェブ小説発でもないライトノベルだと、そういうのとも違いますからね。よし考えるぞ、考えるんだ、考えないとな、考えよう、うん、じゃあ書こう、書くぞ、書くんだ、書くよ、書いちゃうよ、書くのか、書くか、書こう、書く……みたいに、自分で毎回、気持ちを作らないといけません。このへんは誰も助けてくれませんから、一人でなんとかするしかないんですよね。

 まあ、編集者もそのへんはわかっているでしょうから、あんまり無理しないでね、グリムガルはきりのいいところで終わらせて、何か新しいことやってもいいしね、といったふうに、気を遣ってくれたのでしょう。

 それはそれでありかな……と、僕も思っていたのですが、果たして本当にそれでいいんだろうか。当初予定していた終わりまでは、たぶん持ってゆける。でも、あのときの自分が設定していたこの物語のゴールに、今の自分は納得できるのか。そんなふうに感じている時点で、どうも違うと思っているんじゃないのか。今、ハルヒロがこうしてこうやってああなる、という終幕を書いたとしても、僕は後悔するんじゃないか。そういうものを、これまでグリムガルを読んできてくれた読者のみんなに披露して、はい、終わりです、これまでありがとうございました、と言えるんだろうか。

 無理だな、と思ったんですよね。それはできないな、と。

 そこで、前担当編集者と、新担当編集者にも相談して、これこれこういうことで、グリムガルを続けたいし、当初予定していたのとは違うゴールに向かって進みたいんだけど、いいかな、と確認をとったら、いいよ、全然OK、と快諾してもらえたので、よし、じゃあやろう、ということになったのです。

 というわけで、これから劇的に売れ行きが悪くなって打ち切り、みたいなことにならなければ、物語はまだ続きます。どれくらい続くのかは、どうでしょうね、今のところ、具体的なボリュームは見えていないのですが、少しずつアイディアを出して、自分の頭の中で構想を広げている段階なので、すぐ終わるということはない……といいなぁと願っています。

2024/04/26投稿
Loading...
匿名で 十文字青 さんにメッセージを送ろう

利用規約プライバシーポリシーに同意の上ご利用ください

Loading...