便の排泄系の専門の医師(大腸外科医です)としてお答えします。とっても興味深い質問ですね。「人間は本当に排泄機能と生殖機能が同じ部位にあるのか」をまずは考えねばなりません。排泄は主に便と尿に大別されます(細かいことを言えば汗なども排泄の一部です)が、便の排泄出口である肛門と、生殖臓器である陰茎・陰嚢・膣はお隣さんですね。だいたい5-10cm以内にあります。一方、尿の排泄出口である尿道口と、生殖臓器は男性は完全に同じ通り道、女性はお隣さんで2-5cm以内の距離にあります。これらから前述の疑問に答えると「人間のうち男性では尿と精液の通り道が同じだが、便は別、女性では尿と便のどちらも別」となります。
まあ近い位置にあるので「同じ部位」と言っても過言ではなさそうですね。その上で、「繁殖時の衛生環境を考えた場合デメリットが上回るか」を検討します。ちなみに「衛生環境が良い=ウイルス・細菌が少ない」と一般的に解釈されます。
まず、便ルートは衛生環境が最悪、尿ルートは基本的に無菌なので衛生環境が良い、そして生殖機能のメインとなる陰茎・膣はどちらも細菌が常在する、ほどほどの衛生環境です。自然な生殖行為は陰茎が膣に挿入されることで成り立ちますが、そもそも陰茎は他の皮膚と同じかそれ以上の細菌がいますが、膣にはそれらを撃退するための乳酸桿菌と呼ばれる細菌が常在しているのです。ですので通常の生殖行為で細菌性膣炎などになる危険性は低くなっています。
おそらく質問者さんは肛門と膣、肛門と陰茎が近いのはどうなんだ、と考えておられるのでしょう。確かに近いのですが、私なりに設計した人(神様?進化論的?)の気持ちを考えると、「ええ〜と、人間って二足歩行するんでしょ。そうなると重力があるから排泄は下の方がいいんだよね、でも足は運動器でそんな場所の余裕ないから腹腔の一番下でいいよね」みたいな感じで排泄系の場所が決まったんだと思います。そして生殖系は、「うーん、上半身とか顔につけてもいいけど、生殖以外で使わない臓器なんか置く場所がないしなあ・・・たまにしか使わないなら、男は出っ張る必要があるから尿のホース借りちゃダメ?女はへっこませたいから、尿と同じ道だとお産の時に破壊されると困るから別ルートで隣に置こう」みたいなことだったんじゃないでしょうか。そうやって設計してみると、「おお!排泄と生殖を近所にしとけば、羞恥心ってやつでパンツ一個で隠せるし、そうすれば文明が高度になってもOKじゃん!」みたいに座りがよく、これで最終決定したのではないかと思います。
これらは形態学的な検討ですので、進化論的な動物学者さんなんかのご回答も聞いてみたいところです。そもそも動物はみんな同じところにあるんですよ、みたいな。