畑中さま、初めまして。いつも楽しく回答を拝見してます。私は商業連載を持っている漫画家です。まだまだ知名度も低く、オリジナル漫画やコミカライズ、書影イラストなどで細々ながら順調に仕事をしています。

しかし、Xを見ていると二次創作で万バズし、さも人気作家のような振る舞いをしている方を見て「人の褌(作品)で相撲とって、いい気になってていいよな」と嫉妬心が芽生えてしまいます。

Xにいる二次創作の神絵師の中には正体を隠したプロの方もいらっしゃるのもわかっています。またこのような瑣末なことに囚われず、自分の創作を高めていくことが第一であることもわかっています。

そして、商業と二次創作では目的が違うことも理解しているつもりです。商業作品ではお客様を楽しませるエンターテイメントを提供すること、二次創作では己のときめきやキャラへの狂いをぶつけることで、創作の目指す終着地点が違うと思っています。(個人の意見です)

しかし、二次創作でもてはやされている人を見ると、0からエンターテイメントを創作/提供する苦しみを体験しないで他者が作ったキャラクターで人気を得て気持ちよくなる、美味しい上澄だけを体験してる様を見て羨ましく思います。簡単に言ってしまえば人気絵師への嫉妬であり、そのような瑣末な事に嫉妬する自分にも疲れてしまいます。

このくだらない嫉妬心はどのように考えれば克服できるでしょうか?ある程度人気の作家になるしか解消しないのでしょうか。

このようなくだらない質問を不躾にしてしまい申し訳ありませんが、心の在り方をお伺いしたく思わずレターを送ってしまいました。

断言しますが、克服しちゃダメです。

今の気持ちを隠そうとか消そうとすると、地獄の始まりです。

嫉妬する自分のことを、作家である自分の大事な個性・視点として認めてあげてください。

そして、その嫉妬心を、解消させようとするのではなく、どうやって漫画の中に描くかを必死で考えてください。

出来事、人、この世の全ては、描き手の視点によって見え方が変わります。

あなたの視点をどれだけの深度で出せるか。

それがあなたならではの作品を世に出すためのエンタメの勝負どころと言っても過言ではないです。

あなたは嫉妬をするタイプの人間なのに、その視点をダメだと自分で否定し、消そうとして、嫉妬しない人の視点を偽装しようとすることは、作家として命取りです。

あっという間に、突っ込みどころはないが特筆すべきところもない印象の薄い作品を連発する作家の出来あがりです。

嫉妬する心を克服したいと考える部分まで含めて、自分の心の動き、頭の使い方を見つめて、愛して、面白がってください。

面白がってください!!

あなたの面白いところなんですよ。

大事なことなんで3回書きました。

人としては確かに面倒な部分かもしれませんが、面倒な感情を書く作家さんは、古今東西愛されてきたことに目を向けてください。

主人公や、脇役、ライバルでもいいです。

あなたの心の中にある嫉妬のタネをもっと面白く育てて、キャラの言動に活かしてください。

まずは誰にも見せなくていいので、思いつく限りの辛辣なこと、世の中に対してイラッとしていることを書き募ってみてはいかがでしょうか?

きっとね、どれほど嫌なことを書こうと思っても、意外と優しさに溢れたものになる気がしますよ。

だってあなたは、自分の感情をくだらないと俯瞰して見られる作家さんです。

どんなに描き連ねようと、客観性を失わず、ユーモアや優しさを持った上で、負の感情を作品に昇華することが出来る方だと思います。

とにかく批判は十分できているので、もう少しバランス良くなることを目指してください。

自分への批判精神と同じ量だけ、自分の視点を面白がって好きだと感じる気持ちを持って欲しいです。

3か月

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