実際にその宣伝写真を見ていないのであくまで推測になりますが、「周りは白く中心だけピンク色」というのを言葉通り捉えると、それは安全圏内である可能性も結構ありそうです。「周りがピンクで中心が赤」ならアウトですが。また仮に低温調理で下処理をしてからコロモを付けて揚げたとしても「周りは白で中心ピンク」にはなります。とんかつの場合この過程を経るのはデメリットも大きいので、実際そうやっている可能性は低いですが。

もし僕の見立てが間違っていて、写真で中央が明らかに生っぽいようであれば、できれば保健所に通報してあげてください。長い目で見たら確実にお店のためでもあるので。

 

そのお店が(ちゃんとした技術と知識を持っていて)、中心温度までしっかり管理した上でピンクに仕上げているとしても、この案件は保健所的にアウトになる可能性もあると感じます。どういうことか分かりにくいので、僕がこれまで経験してきた保健所とのやり取りから想定しうるやりとりを想像してみます。

保「レアとんかつ、とありますが、生の状態が残るトンカツを提供するのですか?」

店「いえ、中心温度はしっかり安全基準を満たすように調理します」

保「であれば食品安全上は問題ありませんが、このように消費者に誤解を与える表現はやめてください」

つまり、一般の人々に「豚もレア(生)でいいんだ」という誤解を与えかねない表現は罷りならぬ、ということです。ちなみに僕もかつてお店で「合法ユッケ」というメニュー名で低温調理の牛肉料理を出していたところ、これと同じロジックで保健所さんにがっつり怒られたことがあります。「我々をおちょくるようなことはやめてください」とまで言われて肝を冷やしました。

 

しかしですね、合法ユッケはともかく、レアとんかつの場合は、実は反論も簡単です。僕だったら、

「世の中でレアチャーシューという表現は許されているのに、どうしてレアとんかつはダメなんだ?」

と食い下がると思います。

そう、そもそも「レアチャーシュー」という表現はたいへんマズいのではないかと思っています。ラーメンに低温調理を施したピンク色のチャーシューを乗せること自体は全く問題ありません。しかし(安全基準を満たしていれば)その状態は断じて「レア」ではありません。せいぜいミディアムウェルってところでしょう。こういう曖昧な、というか間違った表現が流布してしまったがために、世の中には勘違いして、ガチでレアに近い豚肉を出してしまう人もいますし、果ては「タタキ」みたいな鶏チャーシュー()を堂々と出してしまう店まで現れました。

レアチャーシューというネーミングがお店発信で広まったのか、食べ手側が勝手にそう呼び始めてしまったのかは分かりませんが、なんというか初手からボタンのかけ違いがあったような……。誰かラーメン界隈の影響力の強い人たちが「あれは今後『ロゼチャーシュー』と呼ぶことにしよう!」と言い出してくれればいいのに。おフランス料理ではこういう肉の火入れはロゼと言うザマス。シェー。

2024/03/28投稿
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