立ち食いうどん・そば店における「かき揚げ」の肥大化と消失を憂いています。

自分としては「かき揚げは"うどん屋/そば屋のメニューにあること"が最重要であり、冷凍のペラい種で作ったクオリティ何ら問題ない」という考えなのですが、ある時期から「店できちんと生地から一つ一つ揚げているかき揚げ」をウリにすることが流行りだし、いつしかそれが当然視されるようになった覚えがあります。そこから「やたら面積がデカい」「やたら分厚い」方向にエスカレートするのに時間はかかりませんでした。当然そんなかき揚げをマトモに揚げられる技量の人などごくごく限られるので、外は焦げすぎ・中は生焼け・やたら油を吸って重すぎるかき揚げが出てくる事故が多発、微妙なかき揚げにはリピート客が減少し、今日の原料コスト高を期にメニューから外す……といった流れではないかと想像するのですが、いま「かき揚げ」が同時多発的に立ち食いうどん・そば店……いや、その枠を超えて"うどん食堂"的な店からも消えていってしまっています。

"うどん・そば"と書いたように自分は関西なのですが、肥大化までは東京でも観測していますし、このままではかき揚げが限られた店以外から消えてしまうのではないかと強く強く危惧しています。ただのかき揚げうどん/かき揚げそば好きが何とか出来ることなど思い付かないのですが、この流れに対して何か出来ることはありますでしょうか?

メーカー製「天ぷら粉」の超進化により、日本中の天ぷらのクオリティが上がるとともに、どこに行っても同じようなタイプのものが出て来がちな「天ぷらのテンプレ化(←言いたかっただけ)」が進行しています。

こうしたテンプレ天ぷら(アンドレカンドレもしくはガリレオ・ガリレイみたいですね)の恩恵を最も受けているひとつが、うどん蕎麦業界かもしれませんね。

マニュアルさえしっかりしていれば、本来は難しい料理である厚みのある巨大かき揚げもオペレーションに落とし込めるため、多くの店がそれを出しています。

 

学生時代にアルバイトしていた京都のうどん屋さんでは、天ぷら屋さんから仕入れたペラペラの天ぷらを使っていました。コロモが8割の、しけた駄菓子みたいな、つまり昔のどん兵衛に入っていたようなやつです。

その店は茶店みたいなごく簡素な店でしたが、とにかくダシが絶品で、お揚げさんや肉うどんの牛肉などもとても良いものを仕入れていました。そんな中で、なぜこのような天ぷらを堂々と使っているのか、最初は不思議でした。

しかし何度かまかないで天ぷらうどんを食べるうち、理解しました。存在感が希薄で、つゆを吸ってふやけるしか脳の無いその天ぷらこそが、こういうダシが主役のうどんには最適なのだ、と。

ちなみにその店はうどんの具材で、肉丼や衣笠丼などの丼物も出しており、その中に天丼もありました。その駄菓子天ぷらをうどんつゆで煮てご飯に乗せるだけです。店も流石にそれには気が引けていたのか、天丼を注文されると必ず、「天とじ丼にしよし」と、お客さんを無理やり誘導していました。

 

関西のうどんは、関東の蕎麦とも讃岐うどんとも違い、あくまでツユが主役だと思います。テンプレ天ぷら全般はともかく、テンプレ巨大かき揚げがその主役の邪魔になることは、容易にイメージできます。

またとにかく最近の飲食店は、どこも圧倒的な人手不足です。手間のかかる割に高い値段はつけにくいかき揚げが、真っ先にリストラ対象になることも想像できます。

かと言ってここから、天ぷら屋さんから仕入れる天ぷらへの回帰はあり得ないでしょう。かつて多くあったうどん屋さんに卸す天ぷら屋さんは、そのほとんどが既に廃業しており、今や風前の灯火だそうです。

何かできることは僕も思い付きませんが、強いていうなら、富士そばやゆで太郎などの関東系の立ち食いチェーンの出店に期待するくらいでしょうか。富士そばよりもゆで太郎の方が関西ウケしやすそうな気がします。

かき揚げそばは東京においては確実にメインコンテンツであり、メニューから消えることはまず考えられません。また、関西のうどんにおけるツユがsoupであるのに対して関東のかけそばのツユがsauceであるという概念の違いもあり、巨大化がマイナスに働くこともないでしょう。

いっそ移住はいかがでしょうか?

1年

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