月見バーガーにおいてベーコンの存在感は極めて強いものです。形態的には「パティに薄いベーコンがアクセントとして重ねられている」というテイですが、味の上ではむしろベーコンの方がメインと言っていいくらい。

常日頃から言っているのですが、マックのベーコンは高品質です。別に意図して品質を高めているというよりは、国産のそれとは全く違う欧米の標準的な基準のものがそのまま導入されただけ、と言えばだけですが、凝縮感の強いインパクトのある味です。

そんなベーコンの味は卵とはあまりバッティングしませんが、(肉としておいしいが故に)パティの味わいの一部を覆い隠しています。もちろんそれらの三位一体こそが月見バーガーのキモではありますが、マックの最大の魅力であるパティの牛肉感を楽しむには少し邪魔になるとも言えます。逆に言えば、だからエッグチーズバーガーにはエッグチーズバーガーにしかなし得ない役割があるのです。

ベーコンがズルリと出てしまった場合、その一口は、三位一体のバランスが完全に崩れた、その代わり極めて濃密な味を楽しむ一口と割り切らねばならないかもしれませんね。そしてその後の時代は、改めてじっくりパティそのものを主役に味わうモードに切り替える。ただこのモードチェンジ、つまり気持ちの切り替えをうまく行わないと、なまじ濃密な時代を経験してしまったが故に後半の時代を味気なく感じてしまうことにもなりかねません。

やはり月見バーガーは、しっかりホールドして、ベーコンズルリが決して起こらないように食べ進めるべき食べ物なのではないでしょうか。ベーコンを刻んでしまうと、店側の負荷が増えるだけでなく、マックの数少ない欠点である「細かいレタスがハラハラとこぼれ落ちる現象」と同じ悲劇が起こってしまいそうです。こぼれ落ちたレタスは見て見ぬ振りもできますが、こぼれたベーコンを無視できる剛の者はなかなかいないでしょう。ちまちまと拾って小鳥のようにそれをついばむことになってしまうはずです。あまり美しい風景とは言えません。

アメリカ人はよく、バーガーを上下からムギュッと押しつぶして全体をより一体化させて食べたりしています。日本人はどうしても、バンズのふかふか感を犠牲にしたくないと思ってしまいがちなものです。通常のものよりふかふかした月見バーガーなら尚更でしょう。

しかしこの場合は、あえて心を鬼にして、ムギュと潰れるくらいしっかりホールドして食べるのが正解なのではないか、と僕は思います。これは、より普遍的な現象である「ピクルスズルリの悲劇」も容易に回避します。

11か月

利用規約プライバシーポリシーに同意の上ご利用ください

イナダシュンスケさんの過去の回答
    Loading...