私も料理を習ったことは一度もないので、見よう見まねで自己流で習得しました。最近はYouTubeの料理動画も多いので、学ぶ機会はたくさんありますよね。しかしほとんど料理をしたことがない人が、料理動画を見ていきなり真似をしてもうまく作れないと思います。
なぜなら料理は、分量と手順だけでなく「段取り」「手際の良さ」といったスキルも必要だからです。これらのスキルがわかりやすいかたちで一番必要とされるのは、熱々のパスタです。大きな鍋でパスタを茹で、同時にフライパンで具材を調理し(たとえばトマトパスタならにんにくとトマトなどを炒め煮し、ボンゴレならにんにくとタマネギを炒めてあさりの煮汁を足して煮詰め……といった調理)、パスタが茹で上がる直前にフライパンの具材が完成して、パスタがアルデンテに茹で上がったら即座にフライパンにパスタを移してさっとからめて、皿に盛りつける。段取りと手際の良さの美しいマリアージュです。
これを料理経験の乏しい人がやるのはほとんど無理でしょう。実はフライパンを使った炒めものなどの料理というのは、手際の良さを求められることが多いため、意外と難しいのです。わたしの友人で料理をほとんどしたことない男がいきなりだし巻き卵を作ろうとして、大失敗して卵がぐちゃぐちゃになった……という経験がありました。卵焼きを焼くのは難易度の高い料理です。出し汁を加えて緩くなった卵液を焼くだし巻き卵は、さらに難易度が高い。
なので料理初心者であれば、「段取り」「手際の良さ」が不要な料理を入口にしましょう。それは何かと言えば、シチューとか鍋ものとか煮物です。時間はかかりますが、たいてい弱火にかけて放置しているだけで大丈夫。瞬時の判断とか、そんなものが必要ありません。器具も鍋ひとつですむので、段取りも不要。
暑い夏に鍋ものか〜と思われるでしょうが、ここでひとつ夏でも美味しいシチューのレシピを紹介しておきましょう。アイリッシュ・シチューです。アイルランド風の肉のシチュー。ほんとうはじゃがいもを入れるのですが、皮を剥いたり、じゃがいもを入れるタイミングとかが面倒なので、じゃがいもなしにしちゃいましょう。必要な具材は、豚肉、玉ねぎ、それに塩と水だけです。
豚肉はロースでもバラでもモモでも、塊になったブロックを買ってきます。ハナマサとかに行くと手に入れやすいでしょう。モモ肉が安くていいんじゃないかな。これをカレー肉よりももう少し大きめのぶつ切りにしておきます。玉ねぎは皮を剥いて、半分に切って、あとは適当にスライス。煮込んじゃうとかたちが崩れるので、キレイに揃える必要はありません。
鍋にたっぷりめに水を入れます。長く火にかけているとだんだん煮詰まってくるので、多めで大丈夫。ぶつ切りの豚肉とスライスしたたまねぎを入れます。塩を最初は大さじ1ぐらい入れて、火にかけます。沸騰したらトロ火にします。これだけ。できれば2時間ぐらいそのまま煮込んでください。放置しておいて大丈夫ですが、うっかり忘れて外出したりしないように。
2時間ぐらい煮たら、すっかり肉は柔らかくなってます。汁をスプーンで味見して、薄かったら塩を少しずつ足してみましょう。ビックリするぐらい滋味深い味になっているはずです。これとパンでもあれば、シンプルな晩飯には十分。だれでも作れるのでぜひお試しあれ。