クックパッドが悪いというより、他に良いものがいくらでもある、という事かと思います。

クックパッドの欠点としては、なんといっても玉石混交であることです。料理慣れしていれば玉と石を見分けられるかもしれませんが、初心者にとっては難しい。

つくれぽとか人気システムで、ある程度多くの人がおいしいと認めていそうなレシピは抽出できますが、それがどういう味を求めている人にとっておいしいのかまでは分かりにくいです。どういう文脈の中にあるおいしさなのかは、これもやはり料理をし慣れていないと解読できない。そのあたり、食べログなんかとちょっと似た構造ですね。

 

クックパッド以外のサイトのレシピが全て「玉」かと言われると、決してそういうわけでもありません。しかし、例えば食品メーカーのサイトなどは、メーカーが威信をかけて構築しています。「石」が紛れ込むのは信用自体に関わる。だから全力でそれを排除しようとします。

料理家などのプロが個人名を出す場合も同じです。完成度の低いレシピで評判を落とすわけにはいかない。ある意味常に背水の陣です。そしていずれもそこには複数の人々が関わっています。まずコンセプト(=どういう文脈のおいしさか)があり、それに基づいたテキストがあり、レシピはチェックされ、そして検証されます。それによって精度が上がります。

 

レシピというものは、まず書いてある通りにやらなくてはあまり意味がありません。そしてその上で、次回以降、微調整を加えていくことで自分の味、そのお家の味が完成されていきます。

そうなった時に、そのレシピが、その料理やその料理体系における「基準値」なのかどうかはとても重要です。特に初心者にとっては、まず基準値を掴むことが何より重要だと思います。クックパッドにおいては、どのレシピが基準値的なレシピなのかはとても分かりにくい。これが、初心者にはお勧めできない最大の理由です。

一例を上げると「きょうの料理」のサイトはそのあたりがとても練り込まれていると思います。強いて欠点を挙げると、日本人の料理スキルが全体に高かった時代の基準を今でも受け継いでいる点でしょうか。しかしそれも最近は「ビギナーズ」シリーズなどで補完されています。あのシリーズは、電子レンジ調理だったり麺つゆ使用だったり、一見、巷に溢れるチートレシピと同種のものにも見えますが、実は綿密に「基準値」に基づいています。「工夫」「創作」の入り口ではなく「オーセンティック」の入り口になっているのです。

もうひとつ、初心者から上級者までおすすめのサイトに「白ごはんドットコム」があります。こちらは個人で運営されている例外的なサイトですが、まず最初にオーセンティックに徹するという明確なコンセプトがあります。なおかつ運営者さんの冨田さんは「和食料理人」「メーカーの開発員」という経歴を通じて、言うなればひとりで複数の視点からチェックや検証を行っていると感じます。それをあくまで「現代の家庭料理」に落とし込むという姿勢が明確なので、味付けなどは絶対にオーセンティックを踏み越えない範囲で、今の多くの人に好まれる最適解にも近づけられていると思います。

中〜上級者さんには辻調のサイトも信頼感抜群です。これぞ基準値の極み。あまりにオーセンティックすぎて現代からは失われつつあるものまで網羅されており、料理慣れしている人が改めて基本に立ち返り「本物」を知るのに最適です。

 

クックパッドの利点は、なんと言っても「物量」と「同時代性」でしょうか。先ほど「レシピはそのままに作ること」と書きましたが、料理慣れしている人は場合によってはレシピを「解読」した上で、最初から自分好みに作ることも多いことでしょう。膨大な物量の中からピックアップしたアイデアだけをいただく、という活用法もアリでしょう。そういった営みを前提にするのであれば、クックパッドはまさに「モノはなんでも使いよう」だと思います。

しかし、そんな(質問者さんのような)レベルまで達するのは、普通は簡単なことではなく、そこに至るまでの過程においてはいったんクックパッドを「見ないことにする」という提言自体には合理性があると思います。

ただネットというのはどうしても言葉が強くなってしまう傾向がありますし、実際そうでないと情報の洪水の中でそれは伝わるべき人に伝わらない。だからどうしてもああいう言い方になってしまうのでしょうね。そんな言葉の裏に潜む真意について、今回は解説してみました。

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