Hayato Shimabukuro(島袋隼士):結論から言うと、ビッグバンが起きる可能性はあります。ただし、あくまで可能性の一つに過ぎません。 そもそも、ビッグバンとは何か?というところから話を始めましょう。アインシュタインが一般相対性理論を完成させたことにより、我々の宇宙に対する考え方は劇的に進歩しました。宇宙そのものを物理学の対象として考えることができるようになったのです。一般相対性理論を宇宙に適用すると、宇宙が膨張しているという解を得ることができます(宇宙が静止している、あるいは宇宙が収縮しているという解も同様に得られる)。 これを観測的に示したのがハッブルです。ハッブルは銀河の位置と後退速度には比例関係があるというハッブル・ルメートルの法則を発見し、これは宇宙膨張により起きていると考えることでうまく説明ができました。 そして、宇宙が膨張しているということは、現在よりも過去の宇宙のほうが小さかったことを意味します。したがって、宇宙の時間を逆戻しすると宇宙はとても小さく高温・高温密度な状態だったと考えられます。これをビッグバンといい、ガモフらによってビッグバン時の宇宙での元素合成が議論されました。 すなわち、ビッグバンとは高温・高密度な宇宙の状態を指すわけです。そのため、現在の宇宙が収縮を始めて、どんどん小さくなれば再びビッグバンを起こす可能性はあります。そして、この様な出来事をビッグクランチといいます。 では、現在の宇宙の観測からビッグクランチは起こりそうなのでしょうか?現在の宇宙は、超新星の観測や宇宙マイクロ波背景放射による観測で、加速膨張している事が分かっています。つまり、宇宙は小さくなるどころか、加速膨張してどんどん大きくなっています。したがって、現在の宇宙の状態が続くとビッグクランチが起こる可能性はほとんどないでしょう。もちろん、この先、宇宙が収縮に転じる可能性はありますが。 それよりも、加速膨張がこの先も続くと、宇宙の加速膨張によって銀河も星もバラバラになり、原子や素粒子も引き裂かれ、時空全体が引き裂かれるビッグリップ、あるいは、宇宙に存在する星が燃え尽きて、冷たく真っ暗な宇宙が最後には残るビッグフリーズになると考えられます。 もちろんこれらは、いくつかある宇宙の終焉シナリオに過ぎず、実際の宇宙がどうなるかは何百億年後に生きる人々(存在するのか??)にしか分からないでしょう。(もっと読む)