Yoshi Yamaguchi:回答と言って良いのかわかりませんが、簡潔に言えば「それがTCPの要件だから」です。TCPはコネクション型のプロトコルで、相手が接続できることを確認できて初めて通信を行うプロコルトして定義されています。TCPが最初に提案されたRFC793の序文に次のように書いてあります。 > TCP is a connection-oriented, end-to-end reliable protocol designed to fit > into a layered hierarchy of protocols which support multi-network > applications. 参照としてTCPの最新版のRFCドキュメントであるRFC9293において、状態遷移を定義しているセクションを紹介しておきます。 * https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9293.html#name-state-machine-overview

鈴木 一生:端的に言えば、信頼性がないパケット通信機能を提供するIPの上で、信頼性がある全二重（双方向）通信路を実現するためです。 IP ネットワークに接続された機器には IP アドレスという固有の値が割り振られ、それぞれの機器は、宛先を IP アドレスで指定してパケットを送り出すことができます。 このパケットは相手に届くかもしれませんし、ネットワークが混雑しているなどの理由で途中で破棄されるかもしれません。IP では、このような場合でも何もエラー処理を行わないため、送信側はパケットが正しく受信側に届いたかどうかを知ることができません。このような特性のネットワークを「信頼性がない」と言います。 TCP は、IP の上で信頼性がある双方向通信理を実現します。信頼性があるというのは、一方が送ったデータが紛失、重複や順序の乱れなく相手に届く、もしくは届かなかった場合には送信側にエラーが通知されることです。 IP ネットワークに接続された機器の上でプログラム A と B が実行され、A から B に通信を開始したいとします（例：A が手元の PC で実行される Web ブラウザで、B が Mond の Web サーバー）。TCP の 3 ウェイハンドシェイクでは、まず (1) A から B に SYN フラグを立てたパケットを送り、次に (2) B から A に SYN+ACK フラグを立てたパケットを送り返します。プログラム A はパケット (2) を受け取った段階で、 * A から B に通信ができる（パケット (1) が届いているから） * B から A に通信ができる（パケット (2) が届いているから） ことが分かります。しかし、この段階では B は * A から B に通信ができる（パケット (1) が届いているから） ことは分かりますが、まだ * B から A に通信ができる ことは分かりません。IP では A から B にパケットを送るときと、B から A にパケットを送るときで経路が異なる可能性があるため、一方だけ通信できるという状況も十分に想定できます。そこで最後に (3) A から B に ACK フラグを立てたパケットを送り、それを B が受信した段階で、B も双方向通信が可能だと判断します。 もう一つ、セキュリティ面での配慮もあります。B はパケット (1) を受け取った段階で SYN+ACK を立てた小さなサイズのパケットを送るだけでなく、実際のデータを送ることも可能なように思えます。 しかし IP パケットの送信元 IP アドレスは簡単に偽造が可能なので、B が受け取ったパケットは本当に A から送られてきたものかは分かりません。B がパケット (1) を受け取った段階で通信を開始し A に対して大量のデータを送ると、第三者が A に対して容易に DoS 攻撃を行うことが可能になってしまいます。 p.s. 3 ウェイハンドシェイクだと通信を始める前にパケットを3回やり取りする必要があるため、遅延が発生することは避けられません。これを改善するための手法として TCP を拡張する TFO [1] が使われています。 [1] RFC 7413 TCP Fast Open 日本語訳 https://tex2e.github.io/rfc-translater/html/rfc7413.html