大きな喧嘩をしたわけではないのですが、Iさんというゲーム・クリエーターと、一時期とても気まずくなっていたことがありました。
その理由は、今ははっきりわかっています。とある雑誌の編集者が、Iさんには「渡辺がIさんの悪口を言っている」と、そして僕には「Iが渡辺さんの悪口を言っている」と、告げていたからです。悪口の内容はとても具体的で、僕は一時期とても腹を立ててしまい、対談の企画を断ったりしていました。
詳しくは書きませんが、その編集者には、僕とIさんの間の情報のやり取りを遮断することで得られるメリットがあったんです(大人の世界は面倒くさいですね)。
けれど僕は、とある新聞でIさんの人生相談コラムを読んで、はっと我に返りました。こんなにきちんとものを考えてやさしく語れる人が、あんなひどい陰口をきくはずがない、と気づいたんですね。
Iさんのトークイベントに、招待もされていないのに行きました。そしたらスタッフさんが「Iさんが会いたがってる」と言って、控室に導いてくれたんです。
Iさんが、立って、待っていてくれました。久しぶりに握手しました。
イベントの後、朝まで飲みました。たくさん笑いました。お互いの誤解についても、そのもとになった編集者の言説についても、一切話すことはありませんでした。そんな必要もなかったんです。
Iさんというのは飯野賢治さんです。
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