釜焼きのチャーシュー、おいしいですよね! 肉の凝縮感のある味わいがあって、香ばしさが全体に染み渡って、適度な歯応えもしみじみ美味しい。

しかし煮豚のチャーシューにはそれはそれで別の良さがあります。しっとりジューシーで柔らかく、特にラーメンにおいては、スープや麺としっくりなじむ。それらは、多くの日本人に好まれるファクターだと思います。

そして何より煮豚のチャーシューは経済合理性が高いです。そもそも、焼くための特別な器具がいりません。また、手間をあまりかけずに一度に大量の調理が可能です。

そして、生肉からチャーシューを作ると、焼こうが煮ようが70%程度まで縮みます。歩留まりってやつです。ですが煮豚の場合は、その流出したエキスをスープやかえしに無駄なく活用できます。焼くチャーシューは、その30%をそのまま捨てることになります。ラーメンという食べ物はあくまで庶民のための安価な食べ物として発展してきたので、この経済合理性はとても重要です。

結局、おいしさとしては双方に別の良さがあり、どっちが優れていると決められる物ではありませんが、煮豚は幾分日本人好みであり、かつ店にとってメリットが多いため、価格も抑えられる。そうなるとどうしても、あえて焼いて作るメリットは薄くなります。もちろんそれを逆手に取って、焼くチャーシューで他店との差別化をはかるケースもありますが、皆が一斉にそちらに流れることは無いでしょう。その手間やコストは、スープなど他の要素に振り分ける方が効果的なのでしょうね。

あとは、「叉焼というものはその字にもある通り『焼く』物なのだから、煮たものをチャーシューと呼ぶのはいかがなものか」という問題が残ります。いわゆる「原理主義」の考え方です。正しいか正しくないかの話。

僕も「食ってうまけりゃ細けえことはどうでもいいんだよ」的な考えには全く賛成できず、正しさは常に大事だと思っていますが、同時に、正しさというものは極めて曖昧で、歴史と共に変わっていき、それが新しい文化になるものだとも思っています。そういう意味では、叉焼をルーツに持つ日本のラーメン屋さんのチャーシューは、既に文化として成立しています。それが多くの人に支持されたからですね。

正直僕自身も、単品料理としてのチャーシューは焼いたものが食べたいですが、ラーメンなら煮豚チャーシューの方がむしろ嬉しいです。質問者さんが、もし、やっぱりラーメンであっても焼いたチャーシューを乗せて欲しいと願うなら、そういう店を探して大事に通ったり、その素晴らしさをわかりやすく言語化してアピールし続けたり、やれる「推し活」は色々あると思います。

9か月前

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