「限界分譲地」とは宅地造成されても手つかず売れ残ったままになっている分譲地を意味します。私は仕事柄、過去40年程、アメリカ、ヨーロッパ何か国、そして日本と住んだことがあります。その経験と観察から答えてみます。私の知る(見る)限り、ヨーロッパの人々は主要都市を好み、一般には高所得になればなる程、便利の良い都市の中央を好みます。ヨーロッパのどの大都市を見ても、都市中央には古くて高価な(豪華な)コンドミニアムが立ち並んでおり、主な大学も政治機関も都市中心に位置しています。勿論、高所得者で郊外の田舎に庭園を持っている人たちもいますが、むしろ例外です。ですから、基本的にヨーロッパでは限界分譲地のような問題はありません。

アメリカは(かつての)開拓民の発想を未だにもっているのか、都市から放射状に発展した高速道路システムの影響なのか、所得の低い貧困な黒人やラテン系の移民が都市の中心部に住み着くようになり治安も悪くなり、裕福な白色人種の住民が郊外へ移り住む現象があります。「ホワイトフライト」(White Flight)と「ドーナツ現象」等と呼ばれているものです。そういう意味で、郊外の山や田畑が宅地として開発、販売され、中産階級、ないしは富裕層の人たちが郊外へと庭の大きい、自然の豊かな環境を求めて移動して行っています。それをSuburbiaと呼んだりします。アメリカでは、今度は退職後にSuburbiaの更に外にあるもっと田舎の生活をしたいという需要がかなりあり、不動産業者はその田舎に分譲地を開発しています。水道、ガス管は設置されているものの、まだ家の建っていない分譲地を退職前の中産階級、富裕層の人たちに売る訳です。勿論、水道、ガス管の保管料、固定資産税は買主が払い続けなければなりません。実際には売り切れず、ないしは実際に退職後、色々な理由でその場所に引っ越さない人たちもかなり多くいるのが現状です。例えば、私が以前住んでいたテキサス州のAustinから100km弱離れている所にHorseshoe Bayという地域があります。Austinに住む中産階級、富裕層の人たちに好まれたセカンドホームないしは退職後の生活の場として人気があります。グーグルの地図を見てください。家の建っていない空き地ばかりです。https://www.google.com/maps/place/Horseshoe+Bay,+TX/@30.5290083,-98.3806113,2720m/data=!3m1!1e3!4m6!3m5!1s0x865b038067934035:0xb508268e2d0d450a!8m2!3d30.5440884!4d-98.3698461!16zL20vMDEzbHpq?entry=ttu

当にアメリカ版の限界分譲地です。

日本の場合は、1980年代の高度成長期以来、アメリカで起こったのと同じように、大都市の郊外の更に外に、セカンドホーム(別荘)、退職後の住宅等の開発が盛んになりました。東京を例に取れば、新幹線の普及で伊豆や長野の軽井沢、野尻湖、そして群馬県内の「温泉のある家」等の広告が良く見られるようになりました。勿論、日本の人口減少とも重なって、使われずに限界分譲地になっている所も多いようです。

結論として、限界分譲地の問題はアメリカと日本にある問題で、少なくともヨーロッパにはありません。(他の地域に関しての知識はありません)

2024/04/10投稿
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