世界人口の半分以上が都市に集中し,その都市のほとんどの生活空間では緯度や季節によらずエアコンで気温や湿度が一様化されていますが,気圧については特に亜熱帯~温帯~亜寒帯領域では自然の高気圧や低気圧による気圧変動が室内でももろに現れます.高気圧中心から台風や発達した温帯低気圧の中心までの気圧差は100 hPa以上で,標準で1013 hPaの気圧全体の1割以上に及びます.人工空間では上昇下降中の飛行機機内の気圧変化は2~3割もあり,トンネルを出入りする新幹線で数十hPa,高層ビルのエレベーターでも高度差200 mで20hPa以上とそれぞれ数%の気圧変化があり,これらは変化が時間的に急激なこともあって例えば耳の鼓膜の内外がこの圧力差で引っ張られて痛くなったりした経験をお持ちの方は多いと思います.

気圧差はこのように直接に物理的・力学的に人体に影響を与えますが,低気圧がくると一般に天気は悪くなり(エアコンの効いた室内におられたとしても)多少陰鬱な気分になりがちです.なお何千mもの山に上った場合に生じる高山病は,気圧差というより(組成の割合としては同じだが絶対量が減る)酸素の不足が原因です.高低気圧に伴う悪天は(エアコンがない室外では)気温や湿度の変化でもあるのですが,季節変化や年々の気候変動に伴うものも含めて一般に気温・湿度変動は特に蚊など感染症を媒介する動物の活動に大きく影響を与えます.過去十数万年の現生人類史上最も暑い夏だった今年は,これまで活動が鈍っていた蚊などが,秋になって増えないか心配されています.

私事ながら11年前に本拠のジャカルタで発症した陳旧性心筋梗塞(狭心症)が昨年暮れ再発し,今年は間質性肺炎も併発して,気圧変化と連動した体調変化はまさに自分事となりました.このMondへ頂いた質問にもすぐには対応できず,溜めておいて調子のよい時にまとめて書いたりしています.医者からは台風から逃げよとは言われてませんが,山に登るな,飛行機に乗るなとは言われていて,これは仕事をするなと言われているのに等しいので,精神的にかなり落ち込んでいます.

1年1年更新

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山中 大学 (Manabu D. Yamanaka)さんの過去の回答
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