いつも応援ありがとうございます。まず最初に『数学ガール』は2007年の刊行で、『プログラマの数学』の初版は2005年の刊行ということに思いを馳せます。つまり、この変化が激しい世の中にあって、ずいぶん長期のロングセラーになっていることです。これは一人一人の読者さんが読んでくださるだけではなく、口コミなどで次の世代へも伝えてくださっているからだと思っています。そのことに深く感謝します。

『数学ガール』自体はそもそもこんなにシリーズ化されるとはまったく思っていませんでした。そもそも続編の『数学ガール/フェルマーの最終定理』すら最初の予定にはなかったのです。当時の結城は数学の短い物語を書くのが好きで、Webでいろいろ公開していました。「数学を身近なものにしよう」などという大きな野望を持っていたわけではなく、ひたすら自分が読みたいもの、書きたいものを書いていたと思います。でも公開しているうちに、多くの人から反響や応援をいただき、そうするとうれしくなってもっと書くようになりました。その意味では『数学ガール』を本として誕生させてくださったのは読者さん自身だということになりますね。

本になってからも、SNSやメールを通じて読者さんの声をいただき、次第に現在のようなシリーズとして形をなしていくようになりました。最初は数学と青春物語が絡むものでしたが、次第に「学ぶこと」や「伝えること」や「教えること」がテーマとして付加されていきました。直接的にそのようにせよと誰かから言われたわけではありませんが、読者さんのさまざまな反応を日々見ているうちに、これらのテーマがごく自然に生まれてきたといえます。

そういった経緯ですから、私が作品をコントロールしているという部分もなくはありませんけれど、やはり読者さんが生み出してくださった部分が大きいかなと思います。なお、さらに細かい話については『数学ガールの誕生〜理想の数学対話を求めて』という本にまとめてあります。

『プログラマの数学』は現在第二版になっていますが、もともとの私のアイディアは「プログラミングに携わる人は多いけれど、必ずしもみんながコンピュータサイエンスを専門に学んだわけではない。日々の業務をそつなくこなしているにも関わらず、数学に対してある種のコンプレックスや、『しょせん私は〜』のような引け目を感じている方」にとって何らかのヘルプになるような本を書きたいというものでした。

『プログラマの数学』で扱っているのは、コンピュータサイエンスや離散数学のごくごく基本的な部分です。また、数式もほとんど出てきません。でも、扱っている概念そのものは大切なものを厳選して読者に伝わるように工夫しました。パズル仕立てやゲームっぽいものが多いのもそういう理由からです。

こういう書籍を書くときには正確さと読みやすさのバランスがとても難しくなります。でも幸い、私が想定していた読者さんの多くは喜んでくださったようです。その証拠に第二版として改訂版を出すことができました。

十分コンピュータサイエンスを学んでいる人や数学に長けている人にとっては『プログラマの数学』は知っていることばかりで、あまりおもしろく感じられないかもしれません。実際「こんなのは役に立たない」と言われたこともあります。でもそういう方は想定読者とはちょっと違っていたことになりますので、しょうがないと思っています。

『数学ガール』や『プログラマの数学』が読者さんに与えた影響は多様すぎてここにまとめることはできませんけれど「知識が増えた」というだけではなく、「数学がこわくなくなった」や「数学がきらいじゃなくなった」という読者さんからのご感想はよくいただきます。そしてそのような感想をいただけていることは、著者としてたいへん幸せなことだと思っています。

以上、大ざっぱに思うところを書かせていただきました。ご質問ありがとうございました。

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◆「数学ガール」って、どれから読めばいいの?

https://mm.hyuki.net/n/n08807eef9ef9

◆プログラマの数学 第2版|結城浩

https://www.hyuki.com/math/

2023/08/08投稿
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