星新一の作品ってそんなにすごいんですかね? 有名どころ、例えば「おーいでてこーい」や「ボッコちゃん」何かを読んでみても、何が面白いのかさっぱりです。

前者は「短期的には成果の上がる方法が、長期的な視点から見て本当に有効か考えよ」という凡庸な教訓を、不思議な穴という原理も不明な架空の自然現象を持ち出して伝えているだけです。後者はたしかに最後でなるほど!と思わせますが、面白いのはそこだけで、オチがわかればもう一度読みたいと思うようなものではなかったです。

他にもこんなのがありました。願いを1つだけ叶えてやろう、という神社の狐か何かの誘いに、うっかり「思い出させてくれ」という主人公。そこで奇跡は無駄に使い果たしてしまいました。でも、この手のプロットを題材とした作品で言えば「猿の手」とかのほうがはるかに上でしょう。

また、「家に見知らぬ女がいた→実は主人公が記憶喪失になっていた」とか「来年から禁煙を誓った主人公。しかしやはり最後に一本だけ、と思うと家にはタバコがそっくり消えており、街中からもことごとくタバコの存在が消えていた→実はタバコの存在が見えなくなる薬を飲んでいました(そんなのってあり?デウス・エクス・マキナかな?)」みたいな、かなり質の低い作品も結構目に付きます。

まず基本的な回答としては、お読みになった星新一作品の最後を読むのがいいでしょう。

星自身の言葉が乗っていることもありますが、多くは星の作品を評価する同業者の言葉が載っています。

「そんなにすごいんですか」という質問に対してなら、まずこれが一番真っ当な回答でしょう。

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ではそうした質の高い批評があることを踏まえた上で、個人的に星の作品の特徴に触れていきます。まず多作であるということは「すごい」ことであるでしょう。

公式HPに星作品の一覧がありますが、なるほど膨大な量です。

星新一公式サイト-作品一覧-

SFを中心に生涯1000編を超える作品を執筆し、現在も国内外で人気の「ショートショートの神様」星新一の公式サイトです。

www.hoshishinichi.com

https://www.hoshishinichi.com/list/list1.html

あるいは単独で彼のショートショートを集めた本『星新一ショートショート1001』も出ています。

https://www.shinchosha.co.jp/book/319426/

星新一 『星新一ショートショート1001〈全3冊〉』 | 新潮社

読んでみようか、読みなおそうか。文庫本39冊にわたる短編1042編を全て収録し、日本SF界の巨星・星新一のすべてがわかる、愛蔵版ショートショート大全集。

www.shinchosha.co.jp

私は「夏目漱石1001」や「太宰治1001」が出たと聞いたことがありません。ご提示の『猿の手』の作者W・W・ジェイコブズも1000を超える作品は書いてはいないようです。

なのでまず多作であるということは客観的にも異様であり、平易な言葉にすれば「すごい」のでしょう。

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さて、質問者さんはいくつか「質の低い作品」を出してそれをもって「星新一は”すごくない”のではないか」というのが質問の趣旨に読めます。
では「質の低い作品」を出せば誰でも「すごくない作家」になるでしょうか。
たとえばコナン・ドイルはホームズシリーズでその名声を得ましたが、晩年の作品の評価は高くありません。また彼は歴史小説こそ自分の本来の仕事だと信じましたが、世間はホームズシリーズのみを評価し、彼の歴史小説は今では手に入れるのが困難な量しか流通せず、評価しませんでした。ということは、コナン・ドイルは「すごくない作家」に質問者さんにとってもなるのでしょうか。
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誰でも秀作も駄作も書くものです。まして、星新一は1000を超える作品を書いています。
もしこれだけの作品を書いて駄作が一つもなかったとすれば、私は「駄作を誰かが隠したのだろう」としか思いません。
以上のように、質問者さんが「気に入らない作品がある」ことによって作者を評価するのはおすすめしません。
他方、質問者さんが評価に値する作品が一つもなかったのなら、その作者は質問者さんにとって間違いなく大した人物ではないし、少なくともその作者と質問者さんが相性が悪いのは確実でしょう。

とはいえ、質問者さんが読んでいない星の作品は無数にあることでしょう。この確認は困難を極めます。

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星作品の特徴に戻りますと、質問者さんと相性が悪い部分はあるかと思います。

というのも、質問者さんは作品に「読み応え」を求め、驚きを求めていることが質問からわかります。
こういう分野はご指摘の通り長編小説が強い分野です。
星新一はショートショートを基本としています。短篇小説よりも更に短い、ほぼ台本(プロット)をそのまま書いたような作品が多いと私も考えています。
してみると、星作品は読み応えを求めるものではないのではありませんか。
たとえば、世界で多くの売上を出しているのは「早い、安い、うまい」を標榜するファストフードです。これらとしっかりとした料理店は明確に客層と、利用目的が違うはずです。
ファストフード相手に身構えるのはバカバカしいですし、高級レストランの料理を味も気にせず飲み込むのは同じようにバカバカしいことです。

星の作品は強いて言えばファストフードに近いと考えてみるのはどうでしょう。
多作であるがゆえに、とりあえず読むことができます。ジェイコブズの作品には限りがあります。星の作品も限りはありますが、1000に近い作品があればその「限界」は非常に後になります。

だれでも、これだと思った作者の作品を読み続けたいと思うものです。この欲望を満たすという意味で、星をしのぐ人間はそういないでしょう。

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最後に星の作品で良いと思われるものをいくつか紹介しましょう。
「生活維持省」は人々が良い生活を維持するために働く職員を追った物語で、質問者さんが読んだ『ボッコちゃん』に収録されています。

質問者さんは『ボッコちゃん』をお読みのようですので、これを勧めるにとどめておきます。
もうひとつは「声の網」です。これは同名の本に収録されています。
星としてはやや長編の内容ですので、質問者さんの好みにも合うでしょう。
情報化社会を見透かした等と色々言われる作品で、SFとして「未来を見通した」という部分は評価できるでしょう。

この作品は1969年に書かれたのに、まるでコンピューターのような、まるで携帯電話のような、そしてまるでインターネットのようなものが出るという部分も多くの読者を惹きつけているようですね。

私の回答はこんな所です。

8か月8か月更新

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