「作業ログを書くことに時間をなかなか割り振れない」ということですね。これは作業ログに慣れていないと非常によく起きる現象です。作業ログに慣れてくること、また作業ログの習慣が身についてくること、さらにいうなら作業ログの威力を実感するようになると改善してきます。

とはいうものの、書くのを忘れてしまうようなら習慣も身につきませんので、いくつか作業ログを続けていくためのヒントを書いてみたいと思います。

まずは作業ログを書くタイミングです。作業に集中しているときにわざわざ中断してまで作業ログを書く必要はありません。私の場合にはいつも作業が一段落して「どれ、コーヒーでも飲むか」みたいなタイミングで作業ログを書きます。あるいはまた「本の校正でくたびれたから、ちょっとメルマガの原稿を進めておくか」のように作業が切り替わるタイミングで書くようにしています。

次に作業ログに書く内容です。作業ログに何を書くかは、作業ログに何を求めるかによって変わってきますけれど、まずは習慣づけということで最低限の話をします。私の場合には「何をどのくらいの時間やったか」を一行だけ書いています。たとえば「0.5時間。メルマガ Vol.607 読み返し」のように書いています。掛かった時間と項目だけで、それ以上細かいことは書いていません(もちろん書くときにはたくさん書きます)。私の場合には一日を終えて「ああ、今日はこれこれこういう作業にこれだけ時間を掛けたのだなあ。あの作業にはぜんぜん着手できなかったな」ということを振り返るのが直近の目的なので、それで十分なのです。時間も細かく書いても意味ないので0.5時間とか、1.5時間みたいに0.5時間刻みくらいで書いています。15分以上作業したら0.5時間。1時間32分だったら1.5時間のように。

それから作業ログを書くツールです。私は毎日、毎時間のように作業ログを書いていますので、自分専用のWebアプリを作り、非常に作業ログを書きやすいシステムにしています。自分の行う作業ごとにアイコンがさっと入力できるようにし、また掛かった時間を0.5時間刻みに丸めて記載するような機能を持っています。結果はesaという文書共有システムに保存されます。しかしながら、そういうツールに凝るのはある程度習慣ができてからの方がいいかもしれません。大事なのは「いつも目の前にあってさっと書けること」です。SlackやDiscordを自分一人で使っている人もいます(私も以前そうしていました)。あるいはTwitter(現X)やMastodonのようなSNSを鍵付きアカウントにして記録する方法もあります。EvernoteやNotionなどのクラウドメモもいいですね。あなたが使っているツールの中で「いつも目の前にあってさっと書けること」を実現できるものを利用するといいでしょう。実はコンピュータである必要もありません。紙のメモ帳でもいいのです。

意外に重要なのは作業ログを書く仲間です。私はフリーランスで一人で仕事をしており、上司がいません。また仕事場に同僚もいません。その代わりに自分が日々書いている作業ログを「結城浩の作業ログ」として公開しています(pixivFANBOXやnoteメンバーシップでご支援くださる方向けの特典という扱いです)。つまり、私の作業ログには読者がいます。それによって私は日々自分の作業をその読者向けに書いていることになります。そこまでやる必要はありませんが、たとえば同じような「作業ログ仲間」を作って、SNSなどのツールを利用して互いの作業ログが読めるようにする(あるいは更新通知のみでもいい)と、張り合いが出ます。

作業ログの習慣が身につくかどうかは知的生活において極めて重要です。直接的に自分の作業の記録として参考になるというだけではありません。自分の活動が毎日バラバラの「点」ではなく、たくさんの「線」で出来ていること、そしてまた複数の活動が織られた「面」となっていることを実感することができるからです。がんばってください。

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「作業ログ」に関して、結城はたくさんの文章を書いています。以下もご参考に。

◆作業ログからの経験則

https://mm.hyuki.net/n/n739f9775c88e

◆作業ログが教えてくれること

https://mm.hyuki.net/n/nc2f6c19e1122

◆作業ログを書くタイミング

https://mm.hyuki.net/n/n975e071d3050

◆あなた自身の航海日誌(1995年の文章!)

https://www.hyuki.com/dream/log.html

◆結城浩の作業ログ

https://log.hyuki.net/

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