かつて友人がエリックサウスにスリランカ人の若い女性を連れてきてくれたことがあります。彼女は初めての海外旅行だったのですが、日本食に全く馴染めず、さらにサンドウィッチやカレーといったものもダメで、なんとか食べられそうなものをと来店しました。スリランカの食べ物は南インドと共通する要素が多いのです。

その時はなんとか普通に食べてもらえて、僕もほっとしました。友人曰く、彼女は海外旅行はおろか外食自体ほとんどしたことがなく、生まれてからずっと「お母さんの料理」だけを食べて育ってきたとのことでした。

その時僕が彼女のことを「かわいそう」と思ったかと言うと、全くそんなことはなく、むしろ羨ましいとさえ思いました。彼女の世界は狭いかもしれないけど、友人を介して「お母さんの料理」の話を聞く限り、その閉じた世界はおそらく幸せに満ちているようで、何ひとつ不満は無さそうでした。

彼女は帰国して、そしてまた海外に行くことがあるかはわかりませんが、きっとお母さんの料理をそのまま習い、それを食べ続け、そしてまたそれを家族に伝えていくことになるのでしょう。

彼女に限らず、多くの国の人は日本人の目から見ると食に保守的です。子供の頃から食べ慣れたものだけを一生食べ続け、決して冒険を試みることは無い、それがむしろ普通に見えます。日本人はある意味、異常であり、僕などはその最たるもの、ということです。

それはそれとして、それでも質問者さんが「克服」したいと思うなら、それは可能であろうというのが僕の考えです。なぜなら僕もこれまでいくつも「妙な香りの食べ物」を克服してきたからです。最初から全部好きだったわけではありません。最初は苦労するのが当たり前と言っても言い過ぎではないかもしれません。

質問文を見るに、苦手なものは外来のものに限られているようで、つまりミョウガや紫蘇や柚子などは大丈夫という解釈でよろしいでしょうか。これらは客観的には相当香りが独特かつ強烈です。三つ葉だって生姜だってそうです。だから(細かいようですが)質問者さんは、香りが強いものが苦手なわけではない可能性が高い。慣れない香りを拒絶するという、ある意味真っ当な本能が強いということかと思います。

先ほど「最初は苦労する」と書きましたが、質問者さんは人より苦労を多く感じる気質なのかもしれませんね。それを乗り越えたら何らかのリターンがあるのは間違いないので、これからも少し我慢しながら挑戦を続けていくという選択肢はあると思います。苦手を克服する瞬間って、続けているうちに前触れもなく突然やってくるものです。

でも、それを選択しないからと言ってそれが「勿体ない人生」だなんて、僕はこれっぽっちも思いません。限定された世界をひたすら深く掘っていくこともまた人生の楽しみです。

1年

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