飲食店は料理を考えて作るのが仕事、というイメージがありますが、実際はそれは業務の一部でしかありません。せいぜい1/4といったところでしょうか。しかもその1/4のほとんどは、日々かわりばえのないルーチンワークです。「料理をクリエイトする」なんて、その中の極々一部でしかありません。

飲食店でも(当然のことながら)管理業務は普通の会社同様発生します。人事、経理、総務、教育、受発注と在庫管理、広報、営業、情シス、ETC… 経営規模が小さいので効率化にも限度があり、かなりの割合の時間がそこに割かれます。

そして飲食店には膨大な「名も無き雑用」があります。片付けと掃除はどうかすると料理より多くの時間が必要で、洗う、磨く、修理、整理、などなど、完璧にやろうと思うとキリがありません。

 

独立するということは、これらを全て自分が引き受けるということです。ご夫婦で独立されるのは黄金パターンですが、この場合だと奥さんが管理業務と名もなき雑用のほとんどを請け負います。

責任者は当然、管理業務を一手に引き受けることになります。それに忙殺されて、料理からはほぼ手を引くことになります。

料理が好きで料理がやりたいからこの世界に入った人々にとっては、現場一筋が一番幸せ、ということも充分すぎるほどあり得ます。

 

弊社の創設期、腕利きの料理人であった社長は、管理業務を一手に引き受けました。結果、料理は全て僕が任されました。料理スキルは圧倒的に社長の方が上でしたが、僕は管理能力ゼロ、名も無き雑用はすぐ後回しにする、あと中小企業に欠かせない「人付き合い」に関してもコミュ障。料理以外のことはとてもこいつには任せられん、ということになったわけですね。

その後規模が大きくなるに従って、僕は特殊なものを除き名も無き雑用から解放され、料理のルーチンワークからも多少離れ、クリエイトに多くの時間を割くことになりましたが、これは超超レアケースです。

最近では優秀なクリエーターも社内にどんどん増えたため、自分は社外の仕事も積極的にお受けしている、というのが今の状況です。レア中のレアですね。

 

飲食店を扱うドラマなどで、店のシーンでは料理をするところしか基本描かれません。しかもその中で登場人物たちはなぜか四六時中新しい料理をクリエイトしています。ファンタジーにも程があります。なにテーブルに突っ伏して苦悩してんだよ。そんなことは洗い物を片付けながらやれ。じゃないと今日も終電で帰れないだろ。

あれを真に受けて、妙な夢を見て飲食業界に入ると、人生がおかしなことになってしまいます。

11か月11か月更新

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イナダシュンスケさんの過去の回答
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