鑑定人と美術史家を兼ねていた人たちがいて、その人たちの目にたいする信頼と権威で価値を保証していました。有名な人ではバーナード・ベレンソンという人がいます。

あのベレンソン先生がこの作品をボッティチェリだと言っている!この絵は15世紀フィレンツェの絵ではなくボッティチェリの作品だ!というようなお墨付きを与える感じです。それだけで市場価値が数百倍になりますから、かなり影響力のある仕事だったと思います。なおベレンソンは鑑定仲介料5%を取っていたので億万長者になってフィレンツェ郊外の宮殿を買い、美術史家で最も経済的にも名声的にも成功した人間です。

そのような人たちの名人芸に支えられていたわけですが、一応の根拠はあります。モレッリ法という1890年代に編み出された鑑定法は、画家の個性は誰も気にしない細部にあるとして、描かれている人の耳や口、手といったところを注目する手法です。これは今日でも具象絵画を描く人には有効な鑑定法で、モレッリ法と文献学(一次資料を探し絵の来歴を特定する)の組み合わせ、目と知識のミックスによって目利きたちは鑑定を進めていきました。

19世紀末から20世紀前半の彼らの活躍によって、今の美術史に出てくる大方の作品の作者特定がなされました。それまでは美術館でもかなり適当なところはあったので、貢献度は非常に高いです。ただもちろん名人芸と個人の権威に準拠していることから、ビジネスのためにあえて贋作を真作として画商と2人で儲けるみたいなこともやっていましたが、おっと誰か来たようだ、こんな時間に誰だろう

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