まずは共感しかありません。個人店に行きたいけど気疲れするからという理由だけで避けてしまうことがある、というのもそうですし、そんな時の代替案として百貨店レストラン街のテナント店を選びがち、というのも全く同じです。

ひとつ前の相談箱の方の回答で高級ファミレスについて書きましたが、専門レストランと同等の料理を提供するそういう店が増えたら、ついついそっちばかりに行ってしまうような気がします。タッチパネルオーダー&配膳ロボットだったらますます結構。回転割烹や一蘭形式フレンチの登場もずっと心待ちにしています。

 

個人店の場合、ラーメン店のようにさっと食べてさっと出るような店はともかく、1、2時間かけてゆっくり食事するような店だと、お店の人は「コミュニケーションを中心とする能動的なサービス」も職務のうちと心得ているのが普通だと思います。そういう店は価格も高いわけですが、支払額のうちの少なからぬ割合が「料理そのもの以外」に対して支払われているという自覚もあると思います。

質問者さんや僕のようなタイプの人間は「そんな職務は不必要だし、仮に支払額が料理の価値以上のものだったとしても差額はお布施として納得」と考えるわけですが、そういう人はどちらかと言うと少数派であり、お店の人からは簡単にはその見分けはつきません。お店に対して気を遣って話を合わせてしまったりするとますます見分けがつかなくなります。

また、お店の人の中には本心からその「コミュニケーションという職務」が大好きで、それが店をやるモチベーションの一部になっている人も多いと思います。そういう人は、お客さんの方も常にコミュニケーションを求めているに違いないと思いがちです。もちろんそうでない人もいますが、頑張って職務をまっとうしようとしている場合、お客さん側からはその見分けはつきません。

その結果、実は互いが気を遣いあってやりたくないことをやっている、みたいな状況や、気を遣うことをやめて淡々と振る舞っても「何しに来たんだ」「間が持てねえよ」と不審がられていないかと心配してしまう状況が生まれたりします。そんなこと気にしないでいい、と言えばそれまでですが、気にしてしまうのをそうそう簡単には止められないし、気にしないように気をつけるのもまたしんどい。だからついついテナント店に行ってしまうんですね。

 

ただこの問題、実はそのうち自然と解決するのではとも思ってるんです。今の若い世代は、会社でも仕事と関係ない(ように見える)関わりを徹底的に避けると言います。美容院の予約サイトは、会話を希望する/しない にチェックを入れられるようになりました。「服屋さんに入る時に『接客不要』のワッペンを付けたい」という意見を見て笑ったことがあります。さすがに実装はされていないでしょうが、それは多くの共感を呼んでいました。

世代が進むと、レストランで淡々と接してほしいと願う人の割合は増えていき、それは普通のことになっていくような気もするのです。もちろんコミュニケーションや積極的なサービスを求める層がいなくなることも無いでしょうし、それに応えるのもまた飲食店の役割、ということ自体は変わらないと思いますが。

 

最後に、メニューの頼み方でガッカリされる心配だけはしなくてもいいと思います。お店の人が気にするのは、守破離の守をまだ知らなそうなお客さんに対してです。教えてあげねばと焦るわけです。守破離の離に至った結果その日は変則的なオーダーを決行する、みたいなのは、かえって痛快です。そしてそのどちらなのかは、だいたいわかります。

……と言い切りたいところですが、これもまたそうではない人もいるので、結局厄介ですね。

3か月前

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イナダシュンスケさんの過去の回答
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