鏡の箱に光をとじこめることはできるか。私も気になったのでやってみました。洗面台の鏡を動かして合わせ鏡にし、電気をつける。光がいつまでも往復し続けるはず。電気を消すと...、あれれ? 真っ暗です。何がいけなかったんでしょうか。考えてみましょう。

そもそもなぜ鏡はなぜ光を反射するのでしょう。あのガラスのなかには金属の面があります。銀やアルミだそうです。そう、金属です。金属のなかには個々の原子に束縛されず自由に動ける電子がいっぱいいます。そこに光があたると、電子は光の波(電磁波ですね)の振動につられて振動します。そして、振動する電子はまた電磁波を発する。多くの電子がいっせいに動いて、いっせいに電磁波をだす。これが光の反射です。

しかし、反射の効率が100%になることはありません。押し合いへし合いしている電子が動くわけですから摩擦もおこります。光のエネルギーの一部は失われて熱に変わってしまいます。また、あまり振動数の高い光には電子の動きが追いつかないので反射できなくなります。青い光は反射されず吸収されてしまう。残った光は黄色っぽい。だから金は金色なんですね。

実際の鏡の反射効率は90%程度なんだそうです。なかなかやりますね。でも、光が1回折り返すごとに強度が90%になる。10回折り返すと35%。20回で12%にまで減ってしまいます。100回だとどうなると思います? 0.003%です。光は毎秒30万キロメートル進むんでした。一瞬(仮に100分の1秒としましょうか)の間に、私の洗面台の合わせ鏡では1千万回折り返します。これでは光はもう残らない。

では何年も閉じこめるためにはどうしたらよいでしょうか。そうです。反射効率を上げましょう。90%を99%に改善できたら、(光がなくなるまでの)寿命を10倍のばすことができます。でもまだまだ足りませんね。どこまで改善する必要があるか、考えてみてください。

2年9か月更新

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橋本 省二さんの過去の回答
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