あなたが困っていることは「人と話し合う場面で不都合が起きる」ということですよね。そして「聴覚情報処理能力を高める」というのは確かに一つの解決法で、苦手な部分をよりよい方向に伸ばすというものです。でも、もう一つ解決法があります。それは得意な部分で苦手な部分をカバーするというものです。要するに、読んで理解した方が比較的得意なら、そちらに寄せるように工夫するということ。まずはその点を押さえておきたいところです。

また、話し合いというのは相互関係で成り立っているものです。「自分は話を聞くのが苦手だ」という頭でいると、たとえ話す側に不備がある(要するに話すのが下手である)場合であっても、つい自分の側の責にしてしまうという間違いを起こしかねないので、その点も注意してください。

さて、それを踏まえた上での話ですが、人の話を耳で聞いてリアルタイムで理解するというのは基本的には難しい技術です。私は比較的得意な方だと思いますが、それでも大事な打ち合わせなどで人の話を聞く場合には必ずメモを用意します。つまり、「自分の聴覚に頼らない」ことを心がけています。

また、相手と一対一の場合には、できるだけスムーズに理解が進むように「自分の状況」を相手に伝えるようにしています。わかったなら肯きますが、わからないなら「わからない」という表情をしたり、言葉にして「ちょっといまのところもう一度おうかがいしてもいいですか?」と聞き返したりします。あるいはまた「確認したいのですが、それは○○という理解で良いでしょうか?」のように、自分から早めに相手に対してフィードバックを送ることも心がけています。

理解がおいついていなかったり、相手が言ったことを忘れてしまったりという状況のまま、ずっと話が進んでしまい、最後になってから「結局、何だったかわかりませんでした」となると、相手もがっかりしてしまうことになります。それだったら、途中で話の腰を折るかもしれないけど、確認しつつ進む方がいいですね。

何の話をしているかというと「自分の聴覚情報処理能力を高めることによる問題解決」というのは、自分の内部だけで解決を完結させようとしている態度だということです。それが悪いわけではありません。でも、大事なのはコミュニケーションには相手がいて、相手と自分との相互作用によって場が作られているということ。万能な人間は誰もいません。自分も相手もそれぞれに得意なところ、苦手なところがあります。それを相互に補いつつ情報交換をするような態度を心がけるのがよいんじゃないかと思います。

そして、これは大事なことですが、たとえ耳で聞いた理解力が不足しているとしても「いまのところをもう一度」や「それはこういうことですか」のように積極的なやりとりをする態度は、決して相手に悪い印象はないということ。むしろ「この人はきちんと理解しようとしている」と相手に伝わり、信頼度がアップする可能性もあります。

以上、あなたの求めている回答とは異なる可能性が高いですが、おもったことを書いてみました。何かの参考になれば。

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2024/02/29投稿
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