じゃがいもはおそらく検討に上がったと思います。しかしあの商品はおそらく、セントラルキッチンからの冷凍配送。じゃがいもは食味劣化の点で決定的に冷凍に向かないので、であればさつまいもという発想に至ったものだと思われます。
僕はもしかしたらその時、白菜も検討されたのではないかと思っています。なぜならば松屋はかつて「クリームシチュー定食」においてその手を使ったことがあるからです。しかし松屋サイドの判断としては、白菜じゃさすがに和に傾きすぎだろう、と考えたであろうことは想像に難くありません。個人的には白菜もさつまいももどっちもどっちだと思いますが。
というかそもそも、シュクメルリという料理を再現するにあたって芋も野菜も何も入れる必要はなかったのではないかという話もあります。
いや何も、にんにくと塩と油だけのストロングミニマルスタイルで、といっているわけではありません。生クリームなど乳製品入りのシュクメルリなら現地にもあるわけですから、それを再構築して、いうならばチキンのにんにくクリームソース的なものにすれば、すくなくとも今のほどは突っ込まれることはなかったはず。普通にその方がおいしそうだしご飯が進みそうだし。
さらに松屋らしくご飯を進ませようと思えば、味噌なり醤油なりしのばせるくらいなら、特に誰も文句は言わなかったでしょう。それらの風味はどこかフェヌグリークにも通じるものがあります。
しかし松屋はそうしなかった。なぜか「クリームシチューっぽい何か」に落とし込むことにひたすら情熱を傾けたのです。その謎の情熱はいったいどこから来たのか。実はこれが最大のミステリーだと思います。
9か月