あなたは、いつからその考えを抱くようになったのですか? 何かきっかけがあるのでしょうか。「普通」の家柄に生まれながら、そのように「家柄・血筋コンプレックス」を抱くようになったのには、何かの理由があるのではないでしょうか。
たとえば買い物をするときにも、あなたは一流ブランドのものだけを選んで買っていますか? それが「本物」で、ノーブランドの品物は「本物ではない」というような考えをお持ちで、そういうものだけを身につけているのでしょうか。すぐ隣に安価でデザインもよく、機能的な品物があっても、「これはノーブランドだから偽物」とはねつけるのでしょうか。
確かに、世の中には血筋・家柄の良い生まれの人はいます。ですが、そういう人たちの何が「本物」だとあなたが判断しているのか、私には理解出来ません。生まれつき選び抜かれた存在だから、何の苦労もなく現在も社会的地位を築いているというふうに考えているのであれば、そういう人たちに対する偏見も相当なものと言わなければならないし、また大変に失礼な話だとも思います。確かに「音楽家」「画家」「スポーツ選手」など、さすがに「血筋だなあ」と感じさせる存在というのはいるものです。ですが、では全員がその血筋を背負って、一流の生き方をしているなどということはありません。
あなたのご両親か親戚の方が、そのようなことを幼かった頃に言いましたか? それとも学校の友人にそういう人がいましたか? 「華麗なる一族」の家柄の小説家だけが一流で本物で、その他の小説家は三流または「偽物」なのでしょうか。
あなたのその相当に根強いコンプレックスと、自分が「一流ではない」のは血筋や家柄のせいだという甘え、他力本願には正直なところ、ため息が出ます。あなたが思う「本物」というものがどういうものかは知りませんが、おそらく私が感じている「本物」とはまったく異なるものでしょう。私が思う「本物」は、たとえて言うなら泥田の中からすくっと顔を出しても、そこに確たる気品と存在感を持ち、凜として立つ蓮の花のような存在です。その背景を何一つ知らなくても、周囲を納得させるだけの力を持つ存在です。独立した一個の人間として「本物」ということです。
あなたの他力本願の甘えた考えは、どこかで修正しなれば余計に自分が辛くなっていくでしょう。既に医師にかかっているということですが、その精神科の先生は、あなたにとって「本物」に見えていますか? 見えているのなら、早々に正直に相談すべきだと思います。