シミュレーション仮説は、現状ではきちんとした科学理論としては認められていないね。哲学や科学における面白い命題ではあるけど、今のところは全く解決する見込みはないね。

シミュレーション仮説における主要な批判の1つは、私たちの宇宙が仮にシミュレーションの中にあるとして、それを誰が実行しているのか、という点だね。仮に宇宙全体をシミュレーションする超文明が存在したとするよ。その超文明自身は、自分自身ができるからこそ、自分たちもシミュレーションの中にいるのではないか?と考えてもおかしくないよね?何しろ、明らかに宇宙全体をシミュレーションできない私たちがシミュレーション仮説に行きつくのだから、これは間違いないと思うよ。私たちの宇宙をシミュレーションしている超文明自身がシミュレーションの中にいるということを合理的に否定する理由はない以上、この問題は容易に無限後退に陥るんだよね。つまり、私たちは無限にあり得る超文明の連鎖の中で、たまたま終点にいて、シミュレーション仮説を思いつくけどそれを実行する能力がない状態にいることになるね。そんな偶然があると考えるのは、あまりに人間主義的ではないか?というのがシミュレーション仮説の主要な批判となっているよ。

一方で、シミュレーション仮説は科学の大前提である反証可能性を満たすことがないので、これは科学ではないという批判もあるよ。最も、私はこれには懐疑的なんだよね。ブレーンワールドや多元宇宙論のように、現在では反証可能性を満たしそうにない科学理論はあるけど、じゃあこれは疑似科学だと一蹴されているどころか、真剣に議論されているものがあるんだよね。その理論が様々な観点から議論できるならば、直接的に反証可能性を満たさずとも、妥当な推論で正しさを検証できるだろうという考えがあり、反証可能性は大半の疑似科学を排除するために大事だけど、議論を完全にシャットアウトするための鉄の掟となるべきではないという考えがあるからなんだよね。

もちろん、反証可能性が満たせないのでブレーンワールドや多元宇宙論は科学じゃないという考えもあるよ。ただ、反証可能性があるかないかというのはかなり難しい話で、従来は反証可能性を満たしそうにないというものでも、少なくとも思考実験の上では反証可能性を満たす実験を設定できる、と分かったものもあるんだよね。例えば量子自殺という過激な名前の思考実験は、シュレーディンガーの猫の発展形とも言える思考実験だよ。簡単に言うと、もし量子自殺の実験系を用意して、その人が自殺できずに生き残った場合、原理的にはエヴェレットの多世界解釈の存在が肯定的に証明できる、と言っているんだよね。多世界解釈は反証可能性がないので科学じゃないとする意見もあったわけだけど、少なくとも量子自殺という思考実験の上では、多世界解釈は反証可能性があるので科学と言える、というわけだね。これと同じように、シミュレーション仮説も実験で検証可能ではないか、という説も提唱されているんだよね。

というわけで、質問に対する回答は以下のようになるよ。

Q1. シミュレーション仮説はあり得ると思いますか?

A1. 肯定する材料は今のところ不足しているので、あり得る可能性はゼロじゃないけど、あるという前提で話を進めることはできないね。

Q2. それは科学的な理論だと言えると思いますか?

A2. 現状では反証可能性を満たすとは言えない、けどそれだけで単純に科学的ではないと否定されるのなら、科学コミュニティでここまで真剣に議論されることはないと思うね。

[参考文献]

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彩恵りり🧚‍♀️科学ライター✨おしごと募集中さんの過去の回答
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