居酒屋という業態は、どこも多かれ少なかれ、「個人客ではほとんど利益は出ないから、宴会でしっかり利益を出さないと経営は成り立たない」という感覚はあると思います。安くも高くもない中間的な店、その中でも規模大きめは特にそうでしょう。恥ずかしながら僕もかつては「宴会で出た利益を個人客に還元する」という意識が明確にありました。まあこの辺りは人それぞれでもあり、例えば「個人客相手の商売はあくまで宣伝と割り切り、その中の一部が気に入って宴会で利用してくれることを期待」という考え方もあると思います。

いずれにしてもアウトプットとしては結局同じことで、質問者さんが体感されているように「冷静に計算すると宴会コースの方が割高」というものになりがちなのは確かです。

ただしこれは、価格に下駄を履かせているというよりはむしろ、その時代時代の「宴会の相場」から価格を決定して、そこに合わせて半ば無理やり内容をはめていく、という形になっているはずです。例えばチェーン居酒屋などでは、普段のメニューから計算したら飲み放題込みで3500円くらいしにしかならない内容に、宴会コースの時だけストックしてあるカニを解凍して付けて相場の5000円に合わせる、みたいなパターンがよくありますね。まあこういうふうに形だけでも筋を通すことなく、開き直って、完全に計算が合わない内容のままになってるケースも無いではないと思いますが。

そのお店の価格帯や客層にもよりますが、基本的には、個人客は料理が目当てで来てくれるけど、大人数になるほど単に飲んで騒げればそれでいいというお客さんの割合が増える、という傾向があります。そうでなくても、料理に対して気のない参加者は確実に増えます。そもそもいやいや参加している人も多い。

そうなればなるほど、設定価格に合わせた料理は盛大に残され、飲み放題の杯数は(飲み残しを含め)想定よりずっと増えてしまいます。大宴会がはけたあと、ほぼ手付かずで残っている料理やあちこちに散らばるピッチャーに残されたビールを片付けるのはなかなか精神的にキツいものがあります。

そうなるとどうしても、見た目があからさまにショボくならない範囲で量も可能な限り減らすのが適切であろう、という引力も働きます。こういう、ダメなタイプの神の見えざる手により、がっかり宴会コースは生まれます。このがっかり宴会コースの精神とノウハウを煮詰めに煮詰めたのが、創作肉寿司肉バルチーズフォンデュ個室(以下略)

なのでこの場合一番割を食うのは、全員が進んで参加して純粋に飲み食いを楽しみに集まる小中規模の宴会、ということになり、質問者さんが違和感を感じるのもそういうケースなのではないでしょうか。

しかし最近、特にコロナ以降、宴会は小規模化しており、まさにそういう中小の集まりの重要度が確実に増しています。飲んで騒げればそれでいいという人は世代を追うごとにみるみる減っていますし、参加したくない人まで参加することもなくなりつつあります。だからかつての宴会ビジネスモデルは早晩通用しなくなるはずです。

とは言え、こういうのは地域性や価格帯などによってはまだまだ残存することでしょう。避けるために一番確実なのは、なるべく元々高い店を選ぶことですかね。極端な話、8000円の会席コースが、人数が増えたからってショボくなることはまず無いわけです。また、規模の小さい店の貸し切りというのも狙い目です。

もしくはお店と交渉して、コースではなく、幹事さんが事前にグランドメニューからある程度料理を選んで用意してもらっておくのもいいですね。予算に余裕を残して決めた上で「あとはその日おすすめのものを見繕ってください」、みたいな感じです。

2024/02/02投稿
Loading...
匿名で イナダシュンスケ さんにメッセージを送ろう
0 / 20000

利用規約プライバシーポリシーに同意の上ご利用ください

Loading...